この記事の初出は2024年7月9日
今年もまた「猛暑」となり、連日の猛暑報道が続いている。しかし、それはレポーターが街に出て、温度計を手に「暑いです」と訴え、道行く人に「本当に暑いです」と言ってもらうだけ。あとは、気象予報士のなぜ暑いのかの解説と、全国最高気温ランキングの提示など、まるで「猛暑エンタメ報道」である。
こんな状況では、温暖化が止まるわけがない。政府も温暖化対策を真面目にやる気配すらない。
そこで、今回は、すでに世界中で始まっている温暖化からエスケープするための「気候オアシス」への移住現象を見ながら、今後、私たち(と次世代)はどこに住めばいいのかを、世界視点で考えてみたい。
史上最悪のヒートと史上最大のハリケーン
まず、今年の温暖化、気候変動の異常ぶりから述べてみたい。今日、7月8日、日本各地は今年の最高気温を記録、全国150地点以上で35℃以上の「猛暑日」となった。
最高気温は、和歌山の新宮で39.6℃、東京の府中で39.2℃、私が住む横浜も36.7℃となり、これはもう、外に出られる気温ではない。ちょっと歩いただけで汗だくになり、日向にいれば確実に熱中症になってしまう。
猛暑は、日本だけでない。今日までの報道を振り返ると、なんと言っても衝撃的だったのは、サウジアラビアでメッカへの“大巡礼”中にイスラム教徒が1300人以上も熱中症で死亡したことだろう。記録的なヒート(熱波)で気温が51.8℃になったというが、これは人間が生きていける気温ではない。
このほか、インドのニューデリーでも52.9℃を記録したが、40℃以上となると、もう世界中でザラに記録された。ギリシアではクレタ島で44.5℃が観測され、観光名所コース島では大火災が発生した。火災と言えば、やはり40℃以上を記録したカリフォルニアのサンターバーバラでは大規模な山林火災が起こった。
記録的な気温上昇も驚きだが、それ以上に衝撃的だったのは、カリブ海で発生した風速70mを記録したカテゴリー5のハリケーン「ベリル」だ。
ベリルは史上最速でカテゴリー5となり、グレナダやジャマイカなどカリブ海の島国やメキシコのユカタン半島を直撃し、いったん弱まったものの再び勢力を取り戻してテキサスに上陸した。
この原稿を書きながらCNNを見ると、ヒューストンが暴風雨の被害に見舞われている状況が映し出されている。
IPCC最悪シナリオでは海面上昇1m超え
温暖化がもたらすのは、気温上昇はもちろんのこと、それにともなう大規模な気候変動、そして人類社会の大変動である。
IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)の第6次報告書(AR6)によると、最悪シナリオ(2100年に4℃上昇)では、干ばつと豪雨はいっそう深刻化し、豪雨の雨量は約30%増加、海面は63~101㎝上昇する。
しかし、ここ2、3年、そして今年の状況を見ると、最悪シナリオ以上になるの間違いないと思える。なぜなら、「カーボンニュートラル」と言いながら、その対策に真剣に取り組んでいる国は少ないからだ。とくに、日本は2周も3周も遅れている。
この続きは7月30日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。