夏に気をつけたい健康対策

 

特集
夏に気をつけたい健康対策

夏休みには家族や友人と郊外に出かけたり、サマーキャンプなどに参加する子供たちも多く、外で活動する機会が増えます。この季節の身近な健康トラブルと対策方法について、ニュージャージーにある、ひばりファミリーメディカル・桑間千佳先生にお話を伺いました。

 

ひばりファミリーメディカル

院長 桑間千佳

Chika Kuwama M. D.

東京大学医学部卒業。東京大学附属病院旧第一内科、第三内科で研修。その後東京山手メディカルセンター(旧社会保 険中央病院)に勤務。3年半ニューヨー クに滞在後、東京海上ビル診療所(新宿・ 丸の内)に勤務。その後ニューヨークに 戻り、マウントサイナイ医科大学ベス・イ スラエル病院家庭医療研修プログラムを修了し、米国家庭医学会専門医資格 を取得。以来 20 年にわたり、ニュージャー ジーのエッジウォーター・ファミリー・ケア・ センターで家庭医として診療に携わる。2020 年9月から現職

 

夏の野外活動での注意点

身近な健康トラブルとしては、虫刺されや熱中症があります。

虫刺されは、局所の腫れや痒みを伴います。子供によってはかなり大きく腫れてしまう事もありますが、患部を冷やしたり、市販の塗り薬や抗ヒスタミン剤を服用したりする事で多くの場合対応可能です。一方、ごく稀に全身的なアレルギー反応を起こすことがありえます。また蚊やダニが媒介する病原菌による感染症にかかるリスクもあります。その例としてはウェストナイル病やデング熱、ライム病などが挙げられます。意識障害、高熱、嘔吐などの強い全身症状がある場合は早めに医療機関に相談してください。

これらの感染対策としては、まず蚊やダニに刺されないようにすることが大切です。肌の露出を減らす為、通気性のよい長袖長ズボン、特に明るい色の洋服の着用がおすすめです。虫除けはDEETが10―30%程度含まれている物が効果的です。素肌に日焼け止めを塗ったら、衣服も含めて全身に使用します。(合成繊維の生地は痛むおそれがあるので注意しましょう)顔や首には、手のひらに塗ってからそれを薄くのばすように使うといいでしょう。日焼け止めと異なり、一日のうちに何度も使う必要はありません。手のひらについた虫除けは手洗いをして落としておきましょう。
ニューヨーク近郊に多く見られるライム病対策としては、1日一度は頭から足まで全身をチェックし、皮膚にダニが付着していたら早めに正しく取り除くことが大切です。頭皮、髪の生え際、腋の下、足の付け根、膝の裏、指の間なども念入りに確認してください。ダニに噛まれても、すぐに病原菌に感染する訳ではありません。24から36時間以内にダニを取り除くことで、感染するリスクを大幅に減らすことができます。

皮膚に付着しているダニを見つけたら、ピンセットなどで、できるだけ皮膚に近いところでつかみ、つぶさずねじらず垂直にゆっくり引き抜きましょう。ダニの腹部には病原菌がいる可能性があるので、腹部をつまむのは避けましょう。たとえダニの口の部分が一部皮膚に残ってしまっても自然に取れることが多いです。取り除いた後は石鹸と流水でその部位を洗っておきましょう。もしダニが2−3日以上付着していた可能性が否定できなければ、医療機関に相談される事をお勧めします。

熱中症は今の時期大人も子供も注意が必要です。予防としては、活動前に十分に水分をとり、活動途中にはこまめに水分補給をして、涼しい場所での休憩を取り入れる事が大切です。特別に気温も湿度も高い日には、無理のない活動内容に予定変更するのも良いかもしれません。身体が暑さに慣れていない場合は体調を崩しやすいので、徐々に身体を暑さに慣らしておくことも重要です。もし活動中に頭痛、めまい、吐き気などの症状が現れたら、すぐに活動を中断してください。

熱中症が疑われたら、涼しい場所で仰向けに寝かせます。塩分の入った冷たい飲み物を与え、体温を下げるために体に水を振りかけ、あおぎます。太い血管が体の表面に近い首、脇の下、足の付け根を冷たいもので冷やすことも効果的です。時間がたっても症状の改善が見られない場合は医療機関を受診しましょう。

 

食中毒への対策 

食品の保存温度が高くなりがちな夏場は、食中毒にも気をつけたいですね。手洗いや食材の衛生管理はもちろん、調理をする道具や場所もきれいに保ち、細菌が繁殖しづらい環境を整えましょう。

食中毒の症状は、嘔吐、腹痛、下痢、発熱などがあります。解熱剤の使用はかまいませんが、下痢については病原菌を体内にとどめたくないので、基本的に下痢止めは使いません。多くの場合は休んで水分補給をする事で軽快します。必ずしも抗生物質が必要とは限りません。ただ小さい子供は予備力が少なく脱水状態になりやすいので特に注意が必要です。口当たりの良い飲み物や氷を口に含ませるなどして頻回に水分補給しましょう。脱水の判断には排尿状況が簡単な目安になります。体内の水分が不足すると体が水分を失わないようにするため尿が濃縮され、排尿の回数が減ります。オムツが乾いたままだったり、濃い黄色や茶色っぽい尿が見られたら、更なる水分補給が必要なサインです。口からの補給が難しい場合は、点滴での水分補給が勧められます。こまめに様子を確認し、脱水状態が疑われる、腹痛が強い、便に血液が混じっている、本人が非常にぐったりしている、などの場合には医療機関での処置が必要です。点滴治療ができる救急室などを受診しましょう。

 

夏を楽しみましょう

この時期に起こりうる健康トラブルについてご説明しましたが、決して怖がりすぎる必要はありません。自然と戯れて全身で遊ぶことは大人にとっても子供にとって夏にしかできない貴重な経験です。アメリカの夏休みは一般に日本より長く、普段できないことを体験できる時期です。皆さん健康に気を付けつつ、この夏を存分に楽しんでください。