この記事の初出は2024年7月16日
今年は飲食店の倒産ラッシュの年になる
最近、どこどこの店が閉店、廃業、倒産というニュースが多くなった。街に出ても、つい先日まで営業していた店が閉まっているのをよく見かける。飲食関係のネットを見ると、全国各地で多くの飲食店が姿を消していることがわかる。
帝国データバンクが4月に発表した、2023年度の飲食店の倒産は802件で、2019年度の784件を上回って過去最多を記録している。
業態別では、もっとも多かったのが居酒屋を主体とする「酒場、ビヤホール」の207件。続いてラーメン店などの「中華料理店、その他の東洋料理店」の130件、「西洋料理店」の90件、「バー、キャバレー、ナイトクラブ」の72件となっている。
飲食店の倒産ラッシュの原因は、言うまでもなくインフレによる原料価格の高騰、エネルギーコストの上昇で、そこに人手不足と人件費の上昇、実質賃金の低下による消費不況が拍車をかけている。
となれば、今年は昨年を上回るのは確実だ。おそらく、今年は飲食店の倒産ラッシュの記録的な年になるだろう。
居酒屋はコロナ禍以前の69.1%と大幅減
日本フードサービス協会がまとめた「外食産業市場動向調査」の2024年4月度集計結果(有効回収事業社233社、3万7030店舗)によると、全体売上は昨年同月比で106.0%、2019年同月比では115.1%と、インバウンド効果やリベンジ消費があって、なんとかコロナ禍前に戻っているものの、居酒屋だけは潰滅状態である。
協会の業態カテゴリーである「パブ・居酒屋」を見ると、全体売上は2023年比105.7%となっているが、コロナ禍前の2019年比では、なんと69.1%と大幅に落ち込んでいる。飲食業態のなかで、居酒屋だけはコロナ禍が終わっても、回復の兆しすらないのだ。
コロナ禍が拍車をかけた大手居酒屋チェーンの閉店も止まらない。
「金の蔵」などを運営する「SANKO MARKETING FOODS」、「JFLAホールディングス」、「ダイヤモンドダイニング」など上場主要15社の店舗数は、コロナ禍前の5557店から2024年年6月末には4268店と約23%も減少している。
街のラーメン店が次々に姿を消している
居酒屋に続いてラーメン店も減り続けている。
ラーメンは日本の国民食とされ、訪日外国人の人気も高い。訪日外国人はほぼ必ずラーメン店に足を運んでいるので、インバウンド効果は大いにあるはずだが、倒産が相次いでいる。
東京商工リサーチが4月に発表した2023年度(2023年4月~2024年3月)のラーメン店の倒産(負債1000万円以上)は63件(前年度比173.9%増)で、前年度の2.7倍増と大幅に増加。これまで最多だった2013年度(42件)の1.5倍増で、過去最多を大幅に更新している。
ラーメン店の倒産は、圧倒的に小・零細規模業者が多い。倒産した63件のうち、負債1億円以上はわずか5件しかない。9割以上が負債1億円未満の小規模店。つまり、行列ができるような人気店、大手の人気チェーン店以外の、街のフツーのラーメン店が次々に姿を消しているのだ。
63件というのはあくまで倒産件数であるから、その向こうには不振で廃業したり、閉店したりした店が、おそらく何十、何百倍もあるはずだ。
経済産業省経済センサス活動調査によると、ラーメン店は全国に約1万8000店ある。このうちのおよそ半数が個人経営で、市場規模は約6000億円となっている。この市場の約20%のシェアは上位3社である「餃子の王将」「日高屋」「幸楽苑」が占めていて、この3社の業績は好調だ。また、「一風堂」は国内で135店舗、海外15カ国で274店舗を展開していて、店舗数は海外のほうが上回り。もはや日本のラーメンチェーンとは言えない。
この続きは8月5日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。