オーバーツーリズムで観光地困惑! 「おもてなし」をアピールするのは止めるべき (上)

この記事の初出は2024年7月30日

 猛暑といっても、夏は観光シーズン。全国各地に外国人観光客が押し寄せ、一部でトラブルが発生している。いわゆるオーバーツーリズムだが、これを解消する名案はない。
 ただ、「おもてなし」を観光政策の目玉にするのはやめたほうがいい。「おもてなし」を日本の伝統文化としてアピールしすぎたことも、オーバーツーリズムの原因の一つだからだ。
 伝統文化というが、観光業に当てはめれば、単なる無償サービス。しかも、従業員のタダ働きのうえになりたっている。つまり、本来ならチップをもらっていいものだ。

オーバーツーリズム は「観光公害」?

 このニッポン、どこに行っても外国人観光客。
 それは喜ばしいことかもしれないが、各地で「オーバーツーリズム」が問題化し、議論を呼んでいる。たとえば、姫路市では姫路城の入場料を外国人観光客に限って4倍程度に値上げすることを検討していると報じられた。
 値上げして得られた収入を、施設の管理維持や観光客サービスの拡充に充てたいというのだ。
 オーバーツーリズムは、日本語では「観光公害」と訳されるが、なんかしっくりこない。単に観光客が来すぎることではなく、それによって起こる弊害全般を指すなら、もっとほかの言い方があるように思う。
 それはともかく、数年前まではこんな言葉は誰も使わなかった。それが、コロナ禍が明けて外国人観光客が再び殺到すると、急に使われるようになり、各地でさまざまな問題を引き起こすようになった。
 その一つの例が、今年の5月に河口湖駅前のローソンに張られた「目隠し黒幕」。ローソン越しに見える富士山が人気を呼び、外国人観光客が殺到。四六時中写真撮影をしてマナーを守らないため、急遽取られた“苦肉の索”だ。しかし、「隠すのはどうか」と議論を呼んだ。

京都、富士山、鎌倉で起こっていること

 夏の観光シーズンがやって来て、オーバーツーリズムはいまヒートアップしている。京都では、外国人観光客がバスに乗りすぎて、地元の人が乗れない。祇園の路地奥まで入り込むので、仕方なく一部の私道の通行を禁止。舞妓が撮影目的で追いかけ回される。神社や寺の境内にゴミが溢れるなどの問題が起こり、地元は悲鳴状態になっている。
 富士山も外国人観光客に圧倒的な人気で、登山者の7割は外国人。問題は、この時期、短パンTシャツはまだいいとしてもサンダルで山歩きすること。中にはワンピースとハイヒールの女性もいたりするという。いくら猛暑でも、山頂付近は10度以下になり、夜間は冷える。
 私は鎌倉育ちで、学校に通うのに毎日江ノ電に乗っていたが、いまや江ノ電の乗客は半分以上が外国人になった。それも、香港、台湾、中国、タイなどからの若い旅行客ばかり。
 彼らの目的は、鎌倉高校駅前で降りて、『スラムダンク』の聖地となった踏切で写真を撮ること。そのため、踏切の周囲には、平日でも常時4、50人、休日となると100人以上が道脇でスマホ、カメラを構えている。(つづく)

この続きは8月12日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

 

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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