パリ五輪の熱狂の裏にある、メダルはカネと遺伝子で決まるという真実 (上)

この記事の初出は2024年8月6日

 連日の「熱狂(?)」が続いているパリ五輪も、8月11日に閉幕。今回は、とくに不祥事続きで、興ざめのことも多かったが、熱狂の裏には“隠し難い真実”がある。
 それは、メダルは結局、カネと遺伝子で決まるということ。つまり、史上最大のアスリートの祭典は、観戦、視聴する一般人とは関係のない世界なのだ。
 そのうえで、アスリートたちの戦いを見ないと、本当の五輪はわからない。

開会式は早朝なのに視聴率12%を記録

 パリ五輪の「熱狂(?)の2週間」は、8月11日の閉会式で終わる。連日の猛暑のなか、テレビやネットで観戦し続けていた人も多いと思う。テレビは、毎日、「日本メダルラシュ!」と騒ぎ立て、長時間にわたって放送をしていたので、それ以外のニュースは霞んでしまった印象がある。
 ただ、テレビがいくら騒いでも、日本中が熱狂していたわけではない。実際、視聴率はそれほどではなかった。
 逆転負けに終わった男子バレーボール初戦のドイツ戦は、平均世帯視聴率14.2%(関東地区)。同日の隅田川花火大会を約2%上回っただけだ。
 視聴率で特筆すべきは、やはり開会式。7月27日の午前3時からのライブ中継だったが、12.2%を記録した。
 そこで、思い返してみると、やはりいちばん印象に残っているのは、セーヌ川、エッフェル塔を舞台にした、いかにもフランスという華麗な開会式だ。難病を抱えながら熱唱したセリーヌ・ディオンの姿は、とくに目に焼きついた。
 ただ、これまでを全体として見ると、「失敗五輪」だったのではないだろうか。

「オリンピック」ではなく「誤審ピック」

 五輪旗の逆さま掲揚から始まり、エアコンなし肉料理なしの選手村に対する不満爆発、汚染されたセーヌ川でのトライアスロン強行、女子ボクシングでの性別適格問題、選手へのSNSでの誹謗中傷など、これまでに起こった不祥事、問題を挙げればキリがない。
 とくに日本で、いや世界中で問題化されたのは、疑惑の判定、誤審の多さだ。日本の場合、この被害をもっとも受けたのは、お家芸の柔道だった。
 「待て」なのに抑え込みで1本負けした永山竜樹、混合団体で「指導なし」のひいき審判で負けた阿部一二三は、かわいそうと言うほかない。判定には怒りさえ覚えた。
 そして、極め付けは、混合団体決定戦のデジタルルーレット。なんで、あそこで絶対王者リネールがいてフランス有利の「+90kg」が出るのか?
 これでは、「オリンピック」ではなく「誤審ピック」と言われるのも当然だ。

経済性、温暖化対策を重視して結局は赤字か?

 パリ五輪の運営のまずさ、不祥事続きは、「史上もっとも経済的(エコノミー)な五輪にする」(ブルーノ・ル・メール仏財務相)として、経費を切り詰めたこと。さらに温暖化対策として「カーボンフットプリント50%達成」を目指したことにあると言える。
 もう一つ、ブレイキンなど新競技を含む32競技329種(内追加種目4競技12種目)と種目が多いことも原因だ。これは、史上最多の33競技339種目が行われた前回の東京五輪に次ぐものである。
 すでに、一部報道があるが、当初目標とされた「経済効果120億ドル」は達成されない可能性が高い。また、これまでの五輪と同じく、赤字になるものと見られている。
 観光大国フランスは、五輪開催でさらなる観光客増を狙ったが、猛暑で観光客数は予想以下に落ち込んだことも大きく影響している。
 そもそも、近年の五輪は赤字垂れ流し、不祥事続きのうえ、IOCのボッタクリ営業で、立候補する都市は少ない。今回の立候補はパリとロサンゼルスの2都市のみで、開催年が振り分けられただけである。(つづく)

この続きは8月16日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

 

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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