共同通信
北海道南部の厚沢部(あっさぶ)町などの農家らが、特産のアスパラガスを出荷する際、長さをそろえるため切り落とされる「切り下」を、同じく特産の養殖ウニの餌に活用する取り組みを進めている。5月に試験販売され、身入りも良く、味わいも上々と好評だ。地域の農業と漁業が力を合わせた新たな特産品にと期待がかかる。(共同通信=川村隆真)
JA新はこだて厚沢部営農センターによると、同町など6町の農家でつくる「檜山(ひやま)南部立茎アスパラガス生産組合」では、昨年度約183トンのアスパラを出荷。ただ出荷時に切り落とす1~2センチの根元部分は通常、廃棄せざるを得ない。
根津貴浩組合長(60)は約10年前、環境負荷や廃棄費用の軽減などの観点から、切り下の活用策を考え始めた。当初はペースト状にして商品化することを検討したが、加工の手間がかかることから断念した。
転機は2020年、神奈川県でウニにキャベツを給餌している事例を知ったこと。神奈川県水産技術センターは17年から、海藻を十分に食べられずに身がやせたムラサキウニに、流通規格外品の春キャベツを与えて養殖。同センターによると「ウニはくせがなく味の薄い野菜を好む」という。
切り下も活用可能ではないかと、道庁檜山振興局の檜山地区水産技術普及指導所(江差町)を中心に農水共同での研究プロジェクトが始まった。
21年、同指導所がカゴ内での給餌試験で、ウニがアスパラを食べて育つことを確認した。昨年10月には本格的な給餌を開始。昆布が枯れて餌が少ない10~11月はアスパラを、以降は身を膨らませるため、動物性タンパク質が豊富な魚肉を与えた。切り下は計864キロも活用できたという。
今年5月、「アスパラウニ」として地域の祭りで試験販売。磯臭さが少ないさっぱりした味わいが特徴で、購入者の約8割が「味に満足した」と評価したという。根津組合長は「農業と漁業が一つになった新たなブランドをつくりたい。まずは地域の人に知ってもらえるよう、PR活動に力を入れる」と強調した。