パリ五輪の熱狂の裏にある、メダルはカネと遺伝子で決まるという真実 (下)

この記事の初出は2024年8月6日

世界陸連がついに報奨金、「金」5万ドル

 このような報奨金のほか、所属企業、所属チーム、またスポンサーからの報奨金もあるので、メダル争いは名誉と言うより賞金獲得競争と言っていい。
 とくにプロ選手は、自らスポンサーを募って活動資金を得て、それで選手生活を送っている。トップ選手ともなれば、スポンサー契約料は莫大であり、五輪の活躍が契約料を引き上げる。さらに、CM収入もある。
 こうしたことから、いまの五輪に出るようなトップの選手は、その多くがマネジメント会社と契約して、マネーを得ている。「金権五輪」と言うが、それはIOCのボッタクリビジネスの話ばかりではなく、選手たち自身もドップリとカネに浸かっているのだ。
 パリ五輪の大きな変化は、これまで選手に報奨金を出してこなかった陸上競技の国際統括団体である世界陸連(WA)が、選手個人に報奨金を出したことだ。WAが公表した「金」の報奨金は、5万ドルである。

アメリカは意外に低く、フランスは40%アップ

 ちなみに、『日テレNEWS』が、米メディア『CNBC』の報道を受けて報道したところによると、国からの報奨金がもっとも高い国は香港で、「金」に約1億1480万円、「銀」に約5740万円、「銅」に約2870万円。続いて、シンガポールが、「金」に約8480万円、「銀」に約4240万円、「銅」に約2120万円とのこと。カザフスタン、マレーシア、イタリアも報奨金が高く、これらの国では「金」は2000万円を超えるという。
 なお、アメリカの報奨金は、意外にも低い。
 『USA Today』によると、米国オリンピック委員会(USOC)の報奨金は、「金」3万7500ドル、「銀」2万2500ドル、「銅」1万5000ドル。USOCは、連邦政府から税金での支援を受けてはおらず、企業からの寄付金などで運営されているからという。
 では、開催国のフランスはどうだろうか?
 「金」に8万ユーロ(約1300万円)、「銀」に4万ユーロ、「銅」に1万5000ユーロで、これは、東京に比べて40%のアップという。

一流選手は一流選手の親からしか生まれない

 「カネ」とともに、もう1つの要素である「遺伝子」は、説明するまでもないと思う。誰もがわかっているのに、おおっぴらに言わないが、運動能力は遺伝によるところが大きいということだ。
 パリ五輪前は、連日MLBの大谷翔平の大報道が続いたが、彼の父親は元社会人野球の名選手、母親は実業団の元バトミントン選手である。つまり、持って生まれた運動能力、遺伝子が一般人とは違うのである。
 今回の五輪選手で言えば、卓球の張本智和・美和きょうだいは、父親も母親も卓球の名選手である。
 つまり、一流選手は一流選手の親からしか生まれない。ただ、これを100%肯定してしまうと、努力はほぼ無意味になってしまうので、おおっぴらに言わないだけだ。とくに報道では、選手の努力を称えなければならないので、「遺伝子が違う」などとはひと言も言わない。(つづく)

この続きは8月22日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

 

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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