レコードバーの次は「ブックバー」?
ニューヨーカーがこぞって集うワケを探る
レトロな映画館にわざわざ足を運ぶ若者が増えたり、街のレコードバーがカルチャー好きの仲間が集う場所になったり、「アナログな風潮」が漂う昨今のニューヨーク。そして、どうやら最近では「ブックバー」が人気を集めているらしい。ブルックリン区キャロルガーデンズには7月に「Liz’s Book Bar」(315 Smith St.)がオープン、クイーンズ区リッジウッドには人気のカフェ併設型本屋「Honey Moon」の2号店も誕生するなど、ますます勢いを見せている。
そもそもブックバーとは一体どんな場所? “飲める本屋” という解釈で合っているのだろうか。今回はマンハッタン区イーストビレッジにある「Book Club Bar」(197 E. 3rd St.)に足を運んでみた。
筆者が訪れたのは月曜の18時頃。ちょうど仕事終わりの時間帯だったので混雑具合はいかがなものか、と思いながら店に入ると、なんと満員&ひっきりなしに客が訪れるほどのにぎわいっぷり。店内にはバーウンター沿いに10席ほどの席が並び、奥に行くとテーブル席やソファもそろっており、幸いにもフカフカのソファ席をゲットできた。
ドリンクは自分でレジに注文をしに行くスタイルで(ウェイターに気を遣わなくてすむので、お1人さまにはありがたい)、「Narragansett Lager」(6ドル)と本棚から気になった小説を片手に席に向かった。ちなみに選んだのは『Before the Coffee Gets Cold』(コーヒーが冷めないうちに/川口俊和)。日本でも2018年に映画化され、話題となった作品だ。
席に座って、心のなかで「乾杯」をして本を読み出すや、あまりにも居心地の良すぎる空間に虜になってしまった。程よいボリュームのメローな音楽が流れる店内で、みな読書に夢中。1人で来ている客も多く、友人と来ている人たちでさえ落ち着いた様子で本に向かっており、たまに口を開いたと思えば「Have you read…」と本の話。パソコンを開いてずっと何かを打ち込んでいた女性には、店員が「そろそろ席を空けてもらえる?」と声がけをしていた姿も印象的だった。
忙しないニューヨークで、「本」に没頭するためだけに作られた空間。お酒はワイン(8ドル〜)やビール(6ドル〜)、エスプレッソマティーニをはじめとする各種カクテルもそろっており(しかもお手頃)、「ブックバー」を例えるならば ”自分らしく本に向き合える場所” といったところだろうか。とにかく刺激の多いこの街、「家の外で自分自身に没頭できる場所って、案外なかったんだな」と、ここに来てようやく気づいた筆者。きっとニューヨーカーもこの心のオアシス的要素を求めて「ブックバー」に足を運ぶのだろう。そりゃ盛り上がるわけだ〜。
(文・写真/ナガタミユ)