この記事の初出は2024年8月13日
ミネソタは『大草原の小さな家』の舞台
話はややそれるが、ミネソタには日本でも大ヒットしたテレビドラマ『大草原の小さな家』(Little House on the Prairie)の舞台となったウォルナットグローブと言う村がある。原作者ローラ・インガルス・ワイルダーが少女時代を過ごした小さな村だ。
私は、この物語を何度も繰り返し読み、テレビドラマを見続けた。この物語には、アメリカ中西部に移住した欧州白人家族の歴史が集約されており、本当のアメリカを知る格好のテキストだからだ。というより、ローラという少女のキャラクターに限りなく惹かれた。
ローラの一家もそうだが、ミネソタの住民の大半のルーツは、北欧、ドイツである。つまり、白人である。これはいまもあまり変わらず、ミネソタ州の人種構成は、白人 83.1%、黒人.5.2%、ヒスパニック4.7%、アジア系4.0%、インディアン 1.1%.、混血.2.4%(アメリカの国勢調査、2020年)となっている。
ハリス陣営の戦略はまだ功を奏していない
8月10日、「ニューヨーク・タイムズ」が公表した世論調査によると、激戦州のペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンの3つの州で、ハリスの支持率が50%と、いずれもトランプを4ポイント上回った(トランプは3州とも46%)。
ただし、支持する候補者を決めていない人に「いま選ばなければならないとしたら、どの候補者を選ぶか?」と聞いたところ、「トランプ」と答えた人が31%と、「ハリス」と答えた23%を上回った。
これがなにを意味するかというと、ハリスは黒人有権者の支持は伸びているが、白人有権者の支持は伸びていないということだろう。8月7日に公表された「ロイター・イプソス」の調査(毎月実施)では、ハリスの黒人有権者支持は伸びたが、白人有権者の支持は伸びていない。
7月時点でハリスとトランプのどちらに投票するか聞かれた黒人有権者の約70%はハリス氏と答え、5月と6月にトランプよりバイデン氏を選ぶとした割合の59%を上回った。これに対して、トランプは7月の白人有権者の支持率が50%と、5月と6月の46%から上昇している。ハリスの白人有権者からの支持率は38%で、5月および6月の36%から2%伸びたにすぎない。
その結果、有権者全体の支持率は7月時点でハリス、トランプともに43%とイーブンだ。つまり、まだ、ハリスは白人有権者の支持をそれほど得られておらず、ワルツ副大統領候補効果はまだ功を奏していないということだ。
トランプが付けたあだ名は「笑うカマラ」
まだ、それほど差が開いていないとはいえ、見苦しいのは、トランプがハリスの個人攻撃を展開していることだ。
ジョー・バイデン大統領(81)が選挙戦から降板し、ハリスが後継候補に指名されたときから、トランプはこれを続けてきた。トランプにとって、相手をこき下ろすことは欠かせない戦術と言っていい。
まずトランプは、ハリスを“crazy”(頭がおかしい)“nuts”(いかれてる)と呼んだうえ、“dumb as a rock”(岩盤バカ)と揶揄。そして、口を大きく開けて笑うことをバカにして、“Laffin’ Kamala”(笑うカマラ)というあだ名を付けた。これは、バイデンを“Sleepy Joe”(居眠りジョー)と呼んだのと同じやり方だ。
そして、ついに、人種についても“口撃”を開始した。「ずっとインド人だったのに、突然、黒人になった」と発言 したのである。(つづく)
この続きは9月3日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。