まだ見えてこない立ち位置と政策 ハリス大統領誕生なら日本はどうなるのか?(上)

この記事の初出は2024年8月20日

 “旋風”を巻き起こし、トランプ前大統領を支持率で上回ったカマラ・ハリス副大統領。しかし、まだまだ大きな壁が立ちはだかっている。それは、彼女自身の立ち位置と政策がはっきりしないことだ。中道なのか、左派なのか? 国内向けの経済政策は、いちおう発表されたものの、経済全体の政策と安全保障、外交はまだまだ不透明である。
 これらがはっきりすれば、大統領への道は開けるが、今後これらをもっと明確に示せるのだろうか?
 もちろん、日本にとっての大問題は、彼女が大統領になったとき、日本はどう扱われるかである。

ハリスの支持率がトランプを上回る

 「ハリスvs.トランプ」の対決となってから、ハリスの支持率がじわじわと上がり、ついにトランプを上回った。すでに報じられたように、激戦3州(ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシン)では、いずれもハリスがトランプを4ポイント離した(「NYタイムズ」8月5日発表の世論調査)。
 その後の「ワシントン・ポスト」(8月13日発表)の世論調査では、全米での支持率でハリスがトランプを1ポイント上回った。さらに、17日発表の「NYタイムズ」の世論調査では、激戦3州に続いてアリゾナでもノースカロライナでもハリスがトランプを上回った。
 これは、ハリス個人の人気というより、民主党の戦略が効いたと言っていい。トランプにもバイデンにも首を傾げてきた層、とくに若者層をうまく取り込んだ結果だ。ビヨンセの『フリーダム』に乗って、“ハリス旋風 ”が起こったのである。
 なぜかアメリカの2大政党、民主党(Democrats)、共和党(Republicans)とも、1度指名候補が決まると、党を挙げて自党候補を押すという傾向が強い。ハリスは、民主党内でも評判が悪かったのに、いまや「最高の大統領候補だ」とまで言う党員がいる。

選挙を経ずに候補になった「強運の持ち主」

 アメリカ国内の“ハリス旋風”を見ながら、冷静にハリス大統領の誕生があるのかと考えると、彼女は類い稀な「強運の持ち主」と言うほかない。
 思い返してみれば、前回の大統領予備選に立候補するも、あまりの不人気でアイオワを待たずに撤退した。それをバイデンが左派(サンダース派)の協力を取り付けるために、副大統領候補(ランニングメイト)に選んだのだ。この起用は、女性で非白人(黒人とインド人の混血)であることが大きく影響した。
 トランプ陣営が批判する「DEI vice president」(DEI枠採用の副大統領)というのは、あながち間違っていないのだ。
 さらに、今回、大統領候補になれたのは、民主党内に「バイデンおろし」が起こり、バイデンが仕方なく彼女を指名したからだ。実績や政策は考慮されず、トランプに勝てる可能性があるということで指名された。
 しかも、彼女は政策的に日和見で、政治に対する強い信念がない点が好都合とされたという。つまり、ハリスは選挙などの洗礼を受けないまま、「打倒トランプ」だけのために自動的に候補になってしまったである。
 こんな強運の大統領候補者は、かつていなかった。(つづく)

この続きは9月12日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

 

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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