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共同通信
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北海道登別市の「のぼりべつクマ牧場」で、獣医師の萩野恭伍(きょうご)さん(30)が、飼育されている67頭のヒグマと向き合っている。近年、市街地への出没や、人身被害が各地で問題となっているが、生態を理解し、共生を模索するべきだと強調。「過度に怖がらず、まずは個性豊かな生き物だと知ってほしい」と訴える。(共同通信=松本はな)
「スミリは一匹おおかみだけど、お母さんになったらすごく子煩悩。アレンは大きくて穏やかな子です」。萩野さんが獣舎をのぞきながら、それぞれの特徴を説明する。
大阪府出身。小さい頃から生き物が好きで、獣医師になるのが夢だった。学生時代、ボランティアで訪れた東南アジアのボルネオ島で、オランウータンが森林伐採の影響を受ける現実を目の当たりにし、生態系を守る重要さを痛感した。
クマ牧場は1958年、駆除により頭数が減っていた道内のヒグマを保護しようと開設された。
2019年から勤務。病気で弱っていても素早い動きで威嚇するなど、恐怖を感じる瞬間もあるが、日常とのわずかな行動の違いで、体調の変化などを探し出せるようになってきた。
飼育下でも自然に近い行動を引き出せるように、蜂蜜をすぐに見つけづらい場所に塗って探させるなど、飼育員と共に試行錯誤を重ねる。
人に被害を与えた個体や、リスクがある場合の駆除は必要だと感じる。だが、恐れて排除しようとする前に、人間と同じく個性があり、懸命に生きている姿を見てほしいと萩野さん。「施設が共生の方法を考えるきっかけになれば」と願っている。