徳島南部の観光フレーズ「四国の右下」は自虐的で不適切?

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共同通信
「四国の右下」のロゴマーク

 「四国の右下」。徳島県が南部エリアの観光PRで活用してきたフレーズが消えつつある。「良い言葉ではない」というのが理由だが、観光客からは「良いネーミング」との声も。「右下」は自虐的で不適切な言葉なのか―。

 豊富な魚介類やジビエなどの自然の恵みが多くありながら、県外にはあまり知られていなかった県南部の1市4町。県は2009年ごろから、このフレーズを南部エリアの観光パンフレットなどで使用してきた。

 県職員が首都圏の知人に地元を説明する際に「四国の右下」と表現したことに着想を得たといい、職員らがイベントで着る法被のデザインや交流サイト(SNS)のアカウント名にも採用され、2018年には県と1市4町でつくる「四国の右下観光局」(同県美波町)まで発足した。

 しかし昨年5月、後藤田正純知事が就任すると方針が一変した。「(位置を)東西南北で言うことはあっても『下』というのは良い言葉ではない」。後藤田氏は今年5月の定例会見でこう説明し、県はフレーズを「みなみ阿波」に変更。対象エリアの自治体は印刷物の名称変更といった対応を迫られている。

 観光局は今年4月、県から名称変更を打診された。担当者は「県外や海外の観光客から『印象に残りやすい良いネーミングだ』という声は多数あった」と語るが、内部で議論した結果、県と足並みをそろえるべきだとの意見が出た。10月から「みなみ阿波観光局」に名称を変更する。

 観光局によると、ホームページなどの名称を全て変更する費用は計約400万円。県は一部を補填する方針を示しているが、負担割合は決まっていないという。

 X(旧ツイッター)上では「自虐的だが言外に『でも良い所』というニュアンスがある」「下がネガティブなら『後藤田』も『前藤田』に改名するべきだ」などと指摘する声が上がっている。

「四国の右下」のロゴマークがデザインされた法被
記者会見で「四国の右下」の変更理由を説明する徳島県の後藤田正純知事=5月、県庁