この記事の初出は2024年8月20日
老人バイデンに代わって数々の国際会議に出席
アメリカ国内に関する経済政策はいいとして、やはり大きな問題は国際間の問題にアメリカはどう対処するのか? 安全保障・外交はどうするのか?ということだろう。諸外国、とくに日本にとっては、この点がいちばんの関心事である。
これもまた、これまでのことを振り返ると、同盟国を重視し、アメリカ主導の国際秩序の維持を目指すバイデン政権の路線を、そのまま踏襲するのではと言われている。
ほとんど目立たなかったが、彼女はこれまで、老齢で覚束ないバイデンの代理として、数々の国際会議に出席している。
2月のミュンヘン安全保障会議では、「アメリカのNATOに対する神聖なコミットメントは鉄壁であり続ける。アメリカが自らを孤立させれば脅威は増大するだけだ」と述べ、トランプ前政権とのの違いを強調している。
また、6月に開かれたウクライナ問題を話し合う「「平和サミット」では、「ロシアに代償を払わせ続ける」と述べている。
このような点から見れば、アメリカ外交は大きな変化はせず、世界覇権維持のための政策を続けていくものと思われる。
日本にとっての最大の問題である「対中政策」も変わりないだろう。トランプ前政権、そしてバイデン政権と続いてきた「対中強硬路線」を維持するはずだ。
人権面からの「対中強硬路線」の強化
トランプは、対中貿易の不均衡を最大の問題としたが、バイデンはむしろ、地政学的観点から中国のアメリカ覇権への挑戦を問題視してきた。
アメリカの覇権維持のために、半導体の輸出規制に加え、太陽光パネルや綿花などを扱う中国企業からの輸入を禁止した。半導体輸出規制に関しては、オランダや日本ばかりか、韓国やドイツなどの同盟国まで巻き込んで、中国包囲網を形成した。
ハリスもこうした対中強硬路線を継承するだろうが、彼女がいちばん問題にするのは、検事だったことから、人権問題だろう。すでにバイデン政権は「ウイグル強制労働防止法」に基づき、新疆ウイグル自治区での強制労働に関わった企業からの輸入を禁止する措置を取っている。ハリスは、こうした動きをさらに強化するはずだ。
トランプは「対中強硬派」(ドラゴン・スレイヤー(Dragon Slayers)と思われているが、対中包囲網を意図したTPPから勝手に脱退したことを想起すれば、それは誤解に過ぎない。TPPは貿易協定だが、当初から中国の排除が目的とされていた。トランプには地政学的な観点はなく、2国間のディールにしか興味がない。(つづく)
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※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。