10年ぶりに訪れたグアムは韓国人のリゾート なぜ日本経済は韓国に追い抜かれたのか? (下)

この記事の初出は2024年8月27日

韓国人も日本人も戻って来ないのでヒマ

 2000年代になってから、韓国人がやって来るようになった。韓国人と反比例して日本人が減っていった。韓国経済が目覚ましい発展をとげ、日本経済は「失われた30年」を続けていたからだ。いまや、国民1人あたりの年間所得は韓国のほうが上で、経済から見れば、すでに日本は先進国から転落している。
グアムの観光ビジネスは、2020年からのコロナ禍で大きく落ち込んだが、昨年から回復した。しかし、まだコロナ禍前の状態には戻っていない。
「韓国人も日本人も戻って来ていませんよ。ただ、日本人のほうが少ない。だから、以前と比べたらヒマです」と、ホテルの従業員。
 日本人がコロナ禍が明けてもやって来ない理由は、はっきりしている。空前の円安のせいだ。ドル円が150円ともなれば、グアムに限らず海外旅行は「高値の花」だ。
 この夏の海外旅行客数は、JTBにしてもHISにしても、昨年を上回ったものの、コロナ禍前の2019年に比べたら半減している。

コロナ禍前は毎年150万人が訪れていた

 ここで、グアム政府観光局(GVB)の最新のデータを見ると、グアムを訪れる観光客数はコロナ禍前の半数に過ぎないことがわかる。そのため、グアムの観光産業は、いま大きく落ち込んでいる。
 2024年度の最初の8カ月間にグアムを訪れた入国者は約52万人で、その内訳は以下のとおり。
韓国:281,709人(コロナ禍前の2019年度比59%) 日本:136,079人(同比30.9%)
米国/ハワイ:57,014人(同比91%)
フィリピン: 8,965人(同比59.8%)
ミクロネシア連邦:8,242人(同比96.9%)
中国:3,074人(同比33.2%)
パラオ:2,268人(比86.7%)
 グアムへの入国者数は、コロナ禍前の2019年は約163万人で、それまで毎年150万人に達していた。ところがコロナ禍の2020年はわずか約6万人まで落ち込んだ。そして2023年に約60万人まで回復したが、今年、100万人を超えるのはまだ難しいのではという。
 以下、ここ10年の入国者数を示す。
2024年: 522,186人(最初の8カ月のみ)
2023年: 602,594人
2022年: 216,915人
2021年: 61,607人
2020年: 757,385人
2019年: 1,631,049人
2018年: 1,525,219人
2017年: 1,559,487人
2016年: 1,511,065人
2015年: 1,372,531人

直航便の数は韓国のほうが圧倒的に多い

 言うまでもなく、観光業はグアムの主産業である。それを支えているのは、近年は韓国人であり、韓国人は年間入国者数の5割以上を占めている。これに対して日本人は3割弱。つまり、入国者数の約8割を韓国人と日本人が占めており、韓国人と日本人が来なくなれば、グアムの観光産業は成り立たない。
そこで、前記したデータをもう1度見ると、2024年度は、韓国人がコロナ禍前の約6割、日本人が約3割しか戻っていない。もしこの状況が続けば、グアムの観光産業は今後、大幅なリストラを余儀なくされる。
 いずれにしても、日本人の落ち込みはひどいものがある。
 それにしてもなぜ、これほど多くの韓国人がグアムに来るようになったのだろうか? その理由は、もちろん韓国が豊かになったことにあるが、具体的にそれを示しているのが直航便の多さである。
 いまや日本からのグアムへの直行便は、ユナイテッドとJALしかない。これに対して、韓国からは、大韓航空、ティーウェイ航空、ジンエアー、チェジュ航空が毎日飛ばしている。日本の航空界が規制緩和をせず、LCCの導入が大幅に遅れたことが、この状況を招いた。(つづく)

この続きは9月23日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

 

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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