共同通信
青森名産のリンゴを育てる過程で剪定され、多くが捨てられる枝を使った和紙作りに、弘前大発のベンチャー企業「美枝紙」が乗り出した。7月にはこの和紙を使った商品化第1号として、地元の夏の風物詩「弘前ねぷた」をミニチュアにしたカプセルトイがデビュー。開発者は「いつかは祭りで運行される本物のねぷたに使ってもらいたい」と意気込む。(共同通信=加志村拓)
果樹栽培で日当たりや風通しを良くするため必要な剪定。リンゴの一大産地の青森では、毎年15万トンもの剪定枝が発生するが、そのまま焼却されるものも少なくない。弘前公園など桜の名所でもある弘前市では、その枝も同様に捨てられてしまうことが多いという。
「リンゴと桜という青森らしい未利用資源。捨てるにはもったいない」。弘前大の山科則之講師(51)が思い付いた活用法が、青森の夏祭り「ねぶた」や「ねぷた」で使われ、身近な存在である和紙作りだった。
産学官連携の枠組みで2020年から和紙の研究開発を始め、針金などの骨組みと和紙で作る工芸品「金魚ねぷた」や、シードル瓶のラベルなどを試作。2024年3月に「美枝紙」を立ち上げた。
開発した和紙は、原料のパルプのうち約半分が剪定枝由来で「染料のなじみ具合が良い」と評判も上々だ。ミニチュアねぷたの灯籠部分に使い、弘前大が運行する「弘大ねぷた」の昨年までの歴代4作品を再現。このうち3作品は絵師が実際に制作したものの、コロナ禍で運行できなかった“幻のデザイン”で、ねぷたファンの反響も大きい。9月下旬からは今年の祭りで運行された作品も追加で登場する。
課題は生産コストや強度面だという山科さん。「今後は観光客が気軽に買えるお土産などでラインアップを増やしたい」。ミニチュアねぷたのカプセルトイの販売機は大学の売店や市内の観光施設に置いており、1個1650円。設置場所は順次増やす予定で、同社のホームページで確認できる。