この記事の初出は2024年8月27日
すでに実質的な豊かさでは韓国のほうが上
年々、日本と韓国の経済的な豊かさの差は開いている。日本の経済成長率は2020年以降、毎年1%がやっとなのに対し、韓国はコロナ禍の2020年を除いて3%前後を維持し続けている。
IMFの統計を見ると、2023年における1人あたりGDPは、日本は3万3805ドルであり、アメリカの8万1637ドルの半分以下で、189カ国中32位。一方、韓国は3万3192ドルで、わずかだが日本を下回って33位だが、実質 GDPや購買力平価で見ると、すでに韓国のほうが日本を上回っている。
日本のGDPは、2023年度にドイツに抜かれて世界3位から4位に後退しており、1人あたりのGDPはG7最下位だから、もはや韓国のほうが先進国である。
この情けない状況は、GDPというマネーの面で見るより、それを生み出す人材という面で見ると、もっと情けなくなる。
人材の国際ランキングに見る日韓の差
さまざまな国際比較で日本の地位が低下している。とりわけ、人材に関するランキングで、日本の地位は韓国より圧倒的に低く、項目によっては、世界最低の評価になっている。 たとえば、スイスのビジネススクールIMDが毎年公表している「世界人材ランキング」では、韓国は、今年20位となり、1997年に評価対象になって以来、もっとも高い順位を獲得した。これに対して日本は2009年に23位まで順位を上げたものの、毎年順位を落とし、今年はついに38位まで落ちた。 ちなみに、アメリカは12位、中国は14位で、アジアではシンガポールの8位が最高だ。
また、同じくIMDの「世界のデジタル競争力ランキング」(2023年11月30日発表)でも、日本の順位は32位と圧倒的に低い。
とくに、「上級管理職の国際経験」(64位)、「デジタル/技術的スキル」(63位)、「高度外国人材への魅力」(54位)の3つは、完全に後進国並みである。韓国は6位、台湾は9位、中国は20位である。
ちなみに、首位はアメリカだ。
人材の差、教育の差が日韓の給料の差になった
日本の「失われた30年」を招いた経済低迷で、よく指摘されるのが、労働生産性の低さである。労働生産性を生み出すのは人間であるから、それが低いということは人材の質が低いということである。
日韓がなぜ逆転したのか? いろいろな理由があるが、突き詰めれば人材の差、教育の差ではないかと思う。
韓国企業と日本企業の大きな違いは、成果主義にある。韓国企業は、1997年の通貨危機以後、日本企業と異なり、成果主義により成長の成果を労働者に分配してきた。
日本のような年功序列、終身雇用を廃して、成果をあげた者により多く分配するというメリットシステムを採用してきた。
2000年からのこの四半世紀において、日本の労働者の賃金はほとんど伸びていないが、韓国の労働者の賃金は2倍になっている。そして現在、韓国の労働者は日本の労働者よりも高い実質賃金を得ている。いまや、韓国企業のほうが日本企業より給料が高い。
なぜこうなったかは、日本の人材が韓国の人材より劣ってしまったからである。同じように大学を卒業しても、日本人の若者のほうが企業人材として見た場合、韓国の若者より劣るのだ。これでは、高い給料を払えない。
このままでは日韓の差はますます開く
国家経済が発展していくうえでもっとも重要なことは、時代にあった教育にどれほど投資するか? すなわち、どれほどいい人材をつくれるかだ。
これを日本は怠った。日本は諸外国と比較して、教育にお金をかけていない。
OECD各国における公的教育支出のGDPを比較すると、日本は37カ国中なんと36位と、もはや致命的とも言える状況になっている。
英語とICT教育。デジタルエコノミー時代に、この重要な2点を怠ったために、日本経済は低迷するしかなかった。いまや、日韓のデジタルデバイトの差は、救い難いものになっている。平均的に見て、韓国人のほうがはるかに英語がうまいし、デジタルスキルにおいても日本人より上だ。
はたして、このままの状況が続いていくとどうなるだろうか? おそらく、あと10年後には、日韓の差はもっと開くのは間違いない。
いま、日本ではや野党ともにトップ選びの政局が起こっている。しかし、次のリーダーに誰がなろうと、日本が変わるとは思えない。そんなことを漠然と思いながら、タモン湾に沈む夕日を見ていると、どんどん暗い気分になる。
なんとか、次のリーダーに日本を変えてほしいと願うが、願うだけ無駄なのだろうか。(了)
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。