トランプ再選は日本にとって悪夢。ハリスのほうが中国に対して強硬になる! (上)

この記事の初出は2024年9月3日

 ドナルド・トランプvs.カマラ・ハリス。まだ微妙な情勢だが、どちらが次期大統領になっても、日本にとっていちばんの関心事は、対中政策がどうなるかだ。
 これまでの経緯から見ると、トランプは対中強硬派で、バイデン路線を継承するハリスはそこまで強硬派ではないとされるが、はたして本当か? 日本は嫌中派が多いから、トランプを歓迎する向きがある。しかし、むしろ、ハリスのほうが中国に厳しくあたり、中国は詰んでしまう可能性がある。
 まだ、はっきり見えてこないハリスの対中政策を検証する。

習近平と短時間会話し「対話維持」を伝える

 トランプは「中国製品の関税を60%に引き上げる」などと言ってきたが、ハリスはこれまでほとんど中国に関しては言及していない。ハリス陣営関係者は、「バイデン路線を継承するだろう」と言っているだけで、具体的なことはなにも語っていない。
 バイデン撤退でハリス指名となったとき、ハリスの外交政策担当の側近幹部であるフィル・ゴードンは、メモに「(ハリスは)中国との競争を責任を持って管理する取り組みの一端を担ってきた」と記述した。そのため、トランプほど強硬な路線は取らないだろうと見られているが、本当にそうなるのかはまだわからない。
 はっきりしているのは、バイデンはカーター元大統領以来、在任中に中国を訪問しなかった初の米大統領になりそうだということ。したがって、ハリスも習近平とは1度も公式に会談したことはない。
 ただし、2022年11月にタイで開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議で、ハリスは習近平氏に会い、短い時間、会話した。そのとき、ハリスは中国側に「開かれた対話」を維持すると伝えたという。

北京は注視中だがトランプより期待を!

 こんな状況だから、北京はこれまでハリスに関してはなんのメッセージも発していない。彼女が正式に大統領候補になったときも沈黙したままだった。
 ただし、北京政権内部では、ハリスの言動は注視され続けている。なにしろ、中国にとってアメリカは貿易相手国第1位であり、昨年(2013年)の貿易額は5060億ドル(前年比13.0%減、シェア14.8%)である。*ちなみに、2位は香港で2787億ドル(7.8%減、8.1%)、3位は日本で1581億ドル(8.7%減、4.6%)。
 いくら欧州、ロシアやグローバルサウスなどがあるとはいえ、アメリカは中国にとってかけがえのない存在である。そこで、北京が期待しているのが、ハリスの出身州カリフォルニアの民主党知事ギャビン・ニューサムと言われている。
 ニューサム一行23名は、2023年10月23~29日、香港、深圳、広州、北京、塩城、上海を巡り、習近平と会談した。このとき、経済はもとより文化面、気候変動対策などでも交流を強化するとしたため、中国側から大歓迎された。したがって、北京はハリスにもニューサムと同じような対中政策を期待していると言える。
 大統領候補になるまで、副大統領としてのハリスの評価は低かった。とくに外交面においては、同盟国を訪問するだけで成果に乏しいとされた。ハリスの外交を支えたのは、アントニー・ブリンケン国務長官である。
 2021年1月に副大統領に就任後しばらく、彼女はブリンケンと毎週昼食をともにしてレクチャーを受けたという。また、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)からも、レクチャーを受けたとされる。

この続きは9月24日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

 

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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