トランプ再選は日本にとって悪夢。ハリスのほうが中国に対して強硬になる! (中)

この記事の初出は2024年9月3日

ハリスの会合姿勢を説明にサリバン訪中

 サリバン大統領補佐官は、8月27日から3日間、初めて中国を訪問し、習近平国家主席や王毅外相および張又侠・中央軍事委員会副主席らと会談した。そして、ハリスの外交姿勢について中国側に説明した。
 29日、記者会見に臨んだサリバンは、こう述べた。
「米中間の競争が紛争や対立に繋がらないよう責任を持って管理することが不可欠だというバイデン大統領の考えを共有している」
 サリバンによると、会談で習近平は、「両国関係の安定的、健全かつ持続可能な発展に対する中国の目標は変わらない」としたうえで、「互いの発展をチャンスと見なし、2つの大国としての正しい付き合い方をともに見つけることを希望する」と述べたという。
 中国外務省が公開した会談記録もほぼ同じ内容だ。
 アメリカの安全保障当局者と中国軍関係者が会談するのは、2018年以降、今回が初めてだが、このように、会談は終始友好的だったという。しかし、米中の間には、経済安全保障による貿易問題以外に、南シナ海問題、台湾問題、ウイグル人権問題など、妥協できない障壁がある。
 今回の会談は、この障壁にはほとんど触れず、経済が悪化している中国側がアメリカに対して務めて友好的に振る舞った節がある。とくに、次期大統領をハリスと想定してサリバンとの会談に臨んだようだ。
 いずれにせよ、今後、11月10~16日のAPEC閣僚会議・首脳会議(ペルー・リマ)、11月11月18日~19日のG20サミット(ブラジル・リオデジャネイロ)には、バイデンも習近平も出席する。
 そのときは、アメリカの新大統領も決まっているので、状況はもっとはっきりするだろう。

はっきりしているトランプの対中政策

 はたしてハリスは、単にバイデン路線を継承するだけの対中政策を行うのか? それを検討する前に、はっきりしているトランプの対中政策を見ておきたい。
 トランプは、すべての輸入品に一律10%の関税をかけ、中国からの輸入品にはさらに60%の関税をかけると、繰り返し主張してきた。まさに、保護主義であり、関税対象は中国だけではなく、日本のような同盟国を含むすべての国だ。
 ただ、中国が最大の標的であるのは確か。中国から輸入される電子機器、鉄鋼、医薬品などを4年間で段階的に削減するとし、中国企業がエネルギーやハイテク分野でアメリカの不動産やインフラを所有することを禁止させるとしている。
 また、トランプは為替レートについても言及し、ドル安を目指すとしている。人民元に対してのドルのレートは不当であるとし、プラザ合意のような大規模なドル切り下げを行うと言ってきた。
 これは、人民元だけではない。トランプの主張は以前から変わらず、中国と日本は貿易黒字を助けるために意図的に通貨安を維持してきたという。
 彼はかつてこう言った。
「日本はそうやってつくられた。中国もそうだ。われわれは非常にまずい立場にいる」
 このとんでもない認識は、いまも変わっていない。
 トランプの頭の中は、常にアメリカが儲かればいい。そのためには関税だろうと、対内投資禁止だろうと、為替操作だろうと、なんでもやるということだ。メインターゲットは中国だが、日本も含まれているのを忘れてはいけない。

「台湾を守らない」で「ウクライナ戦争を終結」

 アメリカの対中強硬派は「ドラゴンスレイヤー」と呼ばれるが、トランプ前政権のときは、その代表的な人物、マイク・ポンペオ国務長官やピーター・ナバロ国家通商会議議長、ロバート・ライトハイザー通商代表とが対中政策に関わっていた。 
 しかし、彼らから薫陶を受けたというのに、トランプはまったく逆の「パンダハガー」(親中派)としか思えない主張をする。
 その一つが、「台湾を守らない」である。
 トランプは、今年6月ブルームバーグのインタビューで、このことを表明し、こんなふうに述べた。
 「台湾がわれわれの半導体ビジネスの約100%を奪った」「台湾はわれわれになにも与えてくれない。台湾は9500マイルも離れている。中国からは68マイル離れている」
 この言い方だと、トランプは日本も守らないだろう。かつてトランプは、韓国からアメリカ軍を撤退させるとも言ったことがある。
 なによりもトランプは、同盟国、敵国、競争相手国の区別などどうでもよく、「アメリカ・ファースト」でコストがかかることは安全保障だろうと、なんだろうとやらない。いまも、「NATO(北大西洋条約機構)の目的と使命を根本的に見直すべきだ」と言っている。
 極め付けは、ウクライナ戦争である。トランプは「当選すれば24時間以内に戦争を終結させることができる」と述べている。ただ、具体的な方法には言及していないから、単純に受け取れば「ウクライナを見捨てる」ということになる。(つづく)

この続きは9月27日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

 

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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