共同通信

1954年に創業し、札幌市内に6店舗を構えるジンギスカンの老舗「成吉思汗だるま」が7月、東京に初進出した。これまでも出店を望む声はあったが、マトンを新鮮な状態で運ぶのが難しかったといい、近年チルド技術が向上してようやく実現。副社長の金有燮(キン・ユソプ)さん(51)は「都内にいながら、札幌と変わらない味を楽しめるようにした」と胸を張る。
7月14日、オープン初日の上野御徒町店(東京都文京区)は待ちわびたファンで約200人の列ができた。2階建ての店内は全23席。七輪とドーム型の鉄鍋がカウンターにずらりと並び、雰囲気は札幌の店そのものだ。
肉を付け合わせのネギやタマネギと一緒に自分で焼くのがおなじみで、メニューは、ももやばら肉を組み合わせた「成吉思汗」(1290円)など定番3種を用意。マトン特有のにおいを苦手とする人もいるが、だるまの肉は新鮮で、くせが少なく食べやすい。
北海道滝川市などによると、ジンギスカンが道内の食文化に根付いたのは、第1次世界大戦開戦で羊毛の輸入が減り、国産化を目指し羊を飼育するようになった影響という。現在の同市と札幌市に「種羊場(しゅようじょう)」が造られ、肉も活用されるようになった。
たれに漬け込んで焼く滝川式に対し、焼いた後にたれを付けるのが札幌式といわれる。
だるまのたれはしょうゆベース。創業者で、朝鮮半島出身の故金官(かねつか)菊子さんが発案した。レシピは門外不出で創業家しか知らず、「身一つで異国に渡った祖母の開拓精神が詰まっている」と孫の有燮さん。
賃料や人件費の高い東京で、札幌とほとんど変わらない価格に抑えるため、セルフレジを導入するなど新たな試みにも挑戦。今後は都内で多店舗展開を検討しており「安く手軽に満腹になってほしい、という創業時の思いを伝えていきたい」。


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