共同通信
氷上で熱戦を繰り広げるスポーツ・カーリングを机上で再現したような「カーレット」という競技がある。千葉県では部活動に取り入れた女子高もあり、部員の対話力向上にもつながっているという。全国普及を目指す競技団体は「年代や障害を超えて楽しめる」とアピールする。(共同通信=須藤嶺央)
千葉市中央区の千葉聖心高で9月上旬の放課後、カーレット部の約10人が複数の机を並べ、長さ3.6メートル、幅0.6メートルの競技用マットを敷いて練習試合を始めた。NPO法人「カーレットジャパン協会」(東京)の公式規定に基づく重さ約280グラムのストーンを滑らせ、カーリングと類似のルールで、ハウスと呼ばれる円の中心部を巡るせめぎ合いを繰り広げた。
チーム内で相談を重ねて考え抜き、放たれたストーン。狙い通りに決まると、全員が「すごい」と歓声を上げた。2年生の鉢☆(虫ヘンに猟の異字体のツクリ)花織さん(16)は「最後の一投で大逆転もあるのが魅力」。来年1月に協会が開催を予定する、年代や性別を問わない全国大会での勝利を目標に据える。
千葉聖心高を運営する学校法人の副理事長で、部員を指導する山岸信和さん(73)が、校長だった2012年に創部した。「直接対話が苦手な子が多く、コミュニケーションが鍵となるこの競技が役に立つと思った」。プレーにまつわる意見交換で「会話が増えた」と話す部員は多いという。
競技は2011年、協会理事長で元IT会社経営の田辺陽二さん(75)が考案した。千葉大教育学部で保健体育を専攻。大学の同窓会で「世代を問わず楽しめる競技が少ない」との話になり、幼少期に親しんだおはじき遊びとカーリングを結びつけた。翌年、協会を設立。大学の後輩だった山岸さんも当初から参画した。
競技人口は、協会の推計では今年9月中旬時点で、関東圏を中心に約4万5千人。さまざまな体験会などを通じて増えつつあるという。田辺さんは「中部圏や関西圏でも高齢者らがチームを組む動きが出ている。共生社会のための競技として広めたい」と意欲を示す。