共同通信
名古屋市の東山動植物園で8月から一般公開されている世界最大級のトカゲ、コモドオオトカゲを一目見ようと、大勢の人が訪れている。現在、国内唯一の展示で、愛称は「タロウ」。休日には長い列ができることもある。園の担当者は「独自の生態系で生きてきた姿を通じて、世界を感じてほしい」と話している。(共同通信=平等正裕)
「生息地に天敵がいないこともあり、これほど大きく成長するんです」。9月上旬の日曜日、飼育員による説明会が開かれ、家族連れなど120人が興味深そうに聞いていた。展示室内の一角に餌の丸鶏が置かれ、タロウが勢いよくかみつくと「うわー」と驚きの声が。愛知県日進市の杉本遼介さん(33)は「のんびりと伏せて寝ている姿がかわいかった」と顔をほころばせた。
園によると、コモドオオトカゲはインドネシアに生息し、大きいと体長3メートル以上、体重は160キロを超える。タロウは、7月にシンガポールの動物園から迎え入れた。
園長補佐の佐橋祐磨さん(40)は来園が決まったとき、国内では過去に展示例が少ないため「準備が大変だと思った」という。
かつて飼育したことがある東京の上野動物園、札幌市の円山動物園から情報提供を受けたほか、飼育員や獣医師を約1週間、シンガポールに派遣し、タロウの特徴を学んだ。
変温動物のため、日本に空輸する際は、タロウが入る輸送箱や周辺の温度を一定に保った。
展示室の環境も入念に準備。元々ゴリラ用で床がコンクリートだったため、土やウッドチップを敷き詰め、プールを設置した。空調も改修した。
タロウは元気いっぱいで、特定の飼育員が名前を呼ぶと反応するなど、なじみつつある。今後、繁殖も見据えているという。佐橋さんは「生息するコモド島では、食物連鎖の頂点におり、タロウからも威厳を感じる。来園者の知識が広がるきっかけになればうれしい」と語る。