この記事の初出は2024年9月17日
「敬老の日」(今年は9月16日)がやってきて、全国の自治体では、「百寿者」(100歳以上の人)のお祝い行事が行われた。また、メディアはこぞって「長寿礼賛」の報道を、今年も繰り返した。ここ数年、「人生100年時代」と言われるようになり、私たちはなんとなく、100歳まで生きると思わされてきた。しかし、それは単なる幻想だ。
「百寿者」は、2022年に9万人を超えたが、そのほぼ9割が女性。しかも、その多くが「寝たきり」で「認知症」である。つまり「人生100年」は、絵空事にすぎないのだ。
長生きは必ずしもいいことではない。そして、長生きを望まない高齢者も増えている。
じきに「センテナリアン」は10万人超える
「百寿者」とは、100歳を超えて生きている人々のことで、英語では「センテナリアン」(centenarian)と言う。日本では、99歳は「白寿」、100歳は「百寿」、100歳を超えると「仙寿」と言われる。
昔から「百寿」には盛大なお祝いをするのが恒例で、近年は、自治体からはお祝い金や記念品、国からはお祝い状と銀杯が贈呈される。
100歳以上の人口は、1963年には153人。それが、1981年に1072人と初めて1000人を超え、1998年に1万158人と初めて1万人を超えた。その後、2012年に5万人を超え、2022年に9万人を超えたので、数年以内に10万人を超えるのは間違いない。
人口減社会なのに、センテナリアンが10万人になろうとしているのは、まさに、超高齢社会の象徴だ。高齢者は統計上65歳以上の人々だが、毎年、確実に増えている。総務省の9月1日現在の推計では過去最多の3625万人で、男性は1572万人、女性は2053万人となっている。
高齢者人口の割合(高齢化率)は、現在29.1%。団塊ジュニア世代(第2次ベビーブーム期:1971~1974年生まれ)が65歳以上となる2040年には、34.8%に達すると見込まれている。
NHK『クロ現』も取り上げた「長寿の秘訣」
ア 国や自治体のお祝い行事に合わせて、メディアもセンテナリアンのお祝い報道を繰り返す。地方のテレビ局や地方新聞がとくに取り上げるのは、「わが町の百寿者」。100歳を超えて元気に暮らしている高齢者が、笑顔で画面や紙面に登場する。
また、この時期、「長寿の秘訣」というような番組、記事も多く登場する。たとえば先日、9月4日のNHK『クローズアップ現代』は、まさにその好例で、慶應義塾大学医学部百寿総合研究センター長の新井康通教授の研究、話をメインに、長寿のための健康法が紹介された。
新井教授は、30年以上にわたって100歳以上の人たちを直接訪ねて健康状態や生活状況の調査・分析を重ねてきた。それで得た「長寿につながる3つの共通点」は、①認知機能が高い(認知症になりにくい)②フレイルになりにくい(身体的な衰えがない)③心臓を中心とした循環器系血管が丈夫、という。
そして、「健康寿命を延ばすことにつながるとみられる生活習慣リスト」は、①家族や友人などと積極的に話す②ほかの人と会話を楽しみながら一緒に食事をする③定期的に適度な運動をする④魚を食べる(EPA、DHA)⑤良質なタンパク質が含まれる食品を摂る—–などである。
日本人が長寿なのは「和食」のおかげ
こうして書き起こしてみると、別段、秘訣でもなんでもないではないかと思うが、納得はいく。ただし、ではこれが参考になるかと言えば、人生の後半になってからでは手遅れだろう。
『クロ現』の特集のような報道はこれまで数多くあり、それらを総合すると、センテナリアンには次のような共通点がある。
「幸福感が高く自分の人生を肯定的にとらえている」「毎日必ず体を動かしている」「健康には注意を怠らない」「きちんと食事を摂る」
ここで、自分のことを述べると、以上の項目のほとんどが当てはまらない。ただ、私は「和食」は好きで、魚はよく食べる。
日本は世界的にもセンテナリアンが多い国とされるが、その理由の一つに「和食」が挙げられている。「魚と野菜を中心とした食事」「豆腐、納豆、味噌などの大豆製品の摂取が多い」などが、日本人の長寿の秘訣という。(つづく)
この続きは10月25日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。