「進撃の巨人」がNYタイムズで絶賛
2.5次元のブロードウェイ進出、未来はそう遠くない?
10月11〜13日にニューヨーク・マンハッタンで上演されたミュージカル「進撃の巨人」。チケットは全てソールドアウトで大盛況に終わった本作が先日、「舞台成功の明暗を分ける」といわれる「ニューヨークタイムズ」の劇評欄に掲載された。気になる内容は…? 改めて本作の上演を振り返りたい。
ミュージカルとしては2023年1月に大阪・東京で初演されたが、海外公演は今回が初めて。この春に行われたチケット発売(第1弾)では瞬く間に完売し、その後の販売でも売り切れとなった結果、約2250席の「ニューヨーク・シティ・センター」での全公演(4日間)が満員御礼で上演された。
記録によるとニューヨーク在住、また日本からの来場者だけでなく、約20カ国からファンが集まったというから驚きで、初日にはコスプレを身にまとい、劇場を訪れる人たちの姿が印象的だった。公演が始まっても「ただ観劇するだけ」ではなく、圧巻の巨人や愛されキャラたちの登場シーンになると、客席から惜しみなく声援を送る。
観客をアニメの世界にどっぷり引き込む、この新種とも言える観劇体験を「ニューヨークタイムズ」も絶賛。「2.5次元ミュージカルは、単なる2次元と3次元のハイブリッドミュージカルというだけでなく、高尚と称される『演劇』と低俗とされるポップカルチャー『アニメ』の融合だ。この作品は多彩なコンテンツを舞台上で表現することによって、その定義付けに挑戦している」と評価。
続いて「文化も人種も年齢も異なる人々がコスプレをして、一緒に応援するというのは、劇場に観衆を呼び込む新たな方法なのかもしれない。文化は常に変化している、ブロードウェイも同じであるべきだ」と、辛口の批評で知られ “ブロードウェイへの洗礼の儀式” とまで言われるタイムズが最上級ともいえる賛辞を「進撃の巨人」に贈ったのだ。
イギリスでは「千と千尋の神隠し」「となりのトトロ」、漫画作品「四月は君の嘘」のミュージカル公演が大成功を収めているが、ニューヨークではブロードウェイという分厚い壁を2.5次元作品はまだ登っていない。だが、ニューヨークでは年々規模を拡大しながら2つの漫画・アニメ関連イベントが開催されたり、講談社やYen Press(KADOKAWA)とった日本の大手出版社もスタンバイしている。
となると今回の公演の成功と、盛り上がり続ける日本のコンテンツがブロードウェイで交わる日は、そう遠くないのかもしれない。「また必ず戻ってきます!」と宣言したキャストたちの言葉を信じて、待ってみようと思う。
文/ナガタミユ