不動産バブル崩壊、消費低迷で衰退一途は本当か? けっして侮ってはいけない「中国経済」(上)

この記事の初出は2024年10月22日

 最近の日本の中国報道は、「嫌中・反中」色が強すぎて、中国の本当の姿が見えなくなってはいないだろうか?
「嫌中・反中」言論が得意とするのは、中国がいまにも崩壊するということだが、はたしてそれは本当だろうか? 不動産バブル崩壊、消費低迷、アメリカの対中制裁で、経済は衰退一途というが、本当にそうなるのだろうか?
 今回は、中国はじつはたくましい。中国経済は崩壊などしない。中国を侮ってはいけないということを、述べてみたい。

嫌中・反中の感情で中国を見てはいけない

 いまや、日本の対中言論は、嫌中・反中一色である。中国のことをよく言う人間に、最近は出会ったことがない。誰もが、中国政府の横暴と中国人の傍若無人ぶりを口にする。
 6月に蘇州、9月に深圳で、日本人学校の生徒が襲撃される事件が起きた。8月にはスパイ容疑で勾留中の日本企業の社員が起訴された。また、日本国内では、中国人による靖国神社の石柱への落書き・放尿事件があった。
 さらに、NHKのラジオ国際放送で、中国籍の男性スタッフが尖閣諸島を「中国の領土」と主張し「南京大虐殺を忘れるな」などと発言したことが発覚した。
 こんなことが続けば、嫌中・反中感情はヒートアップする一方になる。ヤフーのコメント欄、「X」などを見ると、いまや、アンチ中国投稿ばかりである。
 しかし、嫌中・反中感情を持って中国を見ると、情勢を大きく見誤ってしまう可能性がある。

減速はしているが4.6%成長で日本よりマシ

 まず、はっきり言っておきたいが、もはや中国は大国であり、経済力、技術力、軍事力、人材力など、あらゆる面で日本を上回っている。したがって、「中国なにするものぞ」などという対抗心を持ってこの国と接することは、まったく意味がない。
 なぜなら、日本はアメリカという「後ろ盾」がない限り、中国とは絶対に対抗できないからだ。しかも、アメリカは太平洋を隔ててはるかに遠く、中国は目の前だ。この地政学的は変えようがないので、なおさら、中国の実力を見誤ってはならない。
 ここで、最新のデータを見ると、中国経済はたしかに落ち込んでいる。
 中国国家統計局が10月18日に発表した7~9月期の国内総生産(GDP、速報値)は、物価変動を除く前年同期比の実質成長率が4.6%。4~6月期(4.7%成長)からさらに減速している。
 しかし、それでも4.6%成長である。ほとんど成長していない日本と比べたら、はるかにマシだ。

中国当局の発表する経済数値は信用できる

 中国経済の不調、減速は、ここ数年ずっと言われてきた。だから、今回の当局の減速発表には驚かない。ただ驚くのは、毎回、当局の発表があるたびに、「中国政府が発表する経済統計は信用できない」「じつは中国は成長していない。当局数字は水増しだ」という声が上がることだ。
 しかし、習近平政権になってから、当局発表は信用できる。以前の高度成長時代は、役人が上げてきた数字が都合が悪いと上層部が脚色していたが、いまはそれがなくなったからだ。
 中国の事情通は、こう言う。
 「習近平というのは嘘や偽りを嫌う人間で、真面目に仕事をやっている役人を重用しています。とくに、国家統計局の役人たちは経済の専門家だから、裏付けのある数字を上げてきます。それをいじくってしまっては、信用を失うのでやりません。
 だから、一党独裁体制下の発表数字だという理由だけで信用しないのは間違っています」
 後述するが、習近平政権というのは、汚職を徹底して撲滅してきたクリーンな政権である。よって、数字も信用あるものと考えていい。
 そこで、繰り返し言うが、国家目標の5%成長は下回っているとはいえ、中国の成長は続いている。中国は拡大し続けている。(つづく)


この続きは11月14日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

 

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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