共同通信

原発に賛成か反対かではなく、まずは現状を知ることから―。関西電力大飯原発が立地する福井県おおい町に、原子力発電の仕組みについて学びながら、分かりやすく情報発信に取り組む住民団体がある。「きのこと星の町おおいネットワーク」で、メンバーは「エネルギーの議論を他人任せにしてほしくない」との思いで活動する。(共同通信=島田早紀)
もともと団体は町の産業振興を推進する目的で、2006年に設立された。町は雇用や財政の面で原発の恩恵を少なからず受けており、団体のサブリーダーを務める小原美弥子(こはら・みやこ)さん(69)も、原発を「あって当たり前の存在」に捉えていた。「使用済み核燃料の行き先など疑問に思ったことはあったが、知識がなく、誰かと疑問を共有することもなかった」
ただ、11年に東京電力福島第1原発事故が起き、12年に大飯原発3、4号機の再稼働が決定すると、関西などから大勢の人が集まり、反原発を訴えるデモが行われた。
リーダーの新谷真由美(しんたに・まゆみ)さん(68)は「これまで関西に電気を供給してきたのに、町そのものが急に非難の的になった感覚だった。私たちが何か悪いことをしたのだろうかと思った」と振り返る。
メンバーは「立地自治体の立場を理解してもらうためにも、まずは自分たちが原発を知ろう」と考え、18年に勉強会を開いた。使用済み核燃料の再処理工場や、高レベル放射性廃棄物の最終処分を研究する北海道幌延町の幌延深地層研究センターなども視察した。
現地で見聞きした情報を冊子にまとめて町内で配布。電力消費地の住民との交流も続けている。
原発の利点や欠点などを分かりやすく説明する紙芝居を制作し、町内の小学校で読み聞かせをしている。町外でも、要望があれば行う予定だ。新谷さんは「電気の課題が立地自治体だけに押しつけられるのではなく、日本全体で話し合われるような未来をつくりたい」と力を込める。



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