共同通信
茨城県が全ての県立校で、学校外で体験・探究活動をした日を年5日まで欠席としない「ラーケーション」を導入し、10月で半年が過ぎた。6月末時点で県内市町村の約86%も導入し、利用件数は県内全体で8500件以上。9月からは特別支援学校でも始まった。県は「想定以上の広がりだ。関心があった活動に学校を飛び出して挑戦するきっかけになっている」と分析する。(共同通信=城下理彩子)
「待てー!」。9月中旬、同県笠間市立大原小の校庭。給食を終えた児童とともに、2人の高校生が声を上げて走り回っていた。県立下館第一高2年の新井菜生さん(17)と大島胡桃さん(17)だ。2人の夢は教員になること。高校の授業や茨城大の公開講義を受けたことを契機に、教員になるために今できることをしたいと考え、教員体験をすることを思いついた。
この日はラーケーションを利用して大原小の教員の一日の流れを体験。漢字の問題で「分からない」と声を上げる児童にヒントをあげるなど、教員の隣で児童と接した。新井さんは「見守るという立場を経験できた」、大島さんは「子ども一人一人の話を聴くことが大切だと分かった」と手応えを感じた様子だった。
ラーケーションは「ラーニング(学習)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語。県単位での導入は愛知県に続き2例目で、茨城県教育庁の担当者は導入の目的を「社会とつながり、自分で考えて課題を発見、解決できる力を養ってほしい」と話す。
先行する愛知県では、保護者が休みを取って子どもと過ごすことを重視し、ラーケーションには保護者同伴が必須だ。これに対し、茨城県は「学び」をより重視し、高校生の場合は保護者不在でも可としているのが特徴だ。海外異文化体験や資格試験の受験、裁判の傍聴などに活用され、取得者からは「欠席を気にせず、将来につながる活動ができた」と前向きな感想が寄せられたという。
学校関係者からは学習の遅れを懸念する声もあり、各学校がプリント配布やオンライン学習でカバーする。県は「多様な活動で幅広く取得できる。自分のあり方をじっくり考える時間にしてほしい」と話し、今後の広がりに期待を寄せている。