不動産バブル崩壊、消費低迷で衰退一途は本当か? けっして侮ってはいけない「中国経済」(下)

この記事の初出は2024年10月22日

生成AIの特許ではアメリカの6倍も出願

 今後の経済をリードするのは、間違いなくAIである。そこで、生成AI特許出願数を国連の「世界知的所有権機関」(World Intellectual Property Organization:WIPO)公表のデータで見ると、ここでもまた中国がダントツの1位である。
 中国は過去10年間(2013年〜2023年)に3万8000件以上の生成AI関連特許を出願しており、2位のアメリカの約6300件のなんと6倍である。ちなみに、3位が韓国、4位が日本、5位がインドとなっている。
 特許出願応募者1位は、TikTokを所有する中国のバイトダンス、2位は同じく中国のアリババグループである。生成AI関連特許の出願数は過去10年間で5万件以上にのぼりますが、そのうちの4分の1は2023年だけに出願されている。

追いつけないとされた半導体はどうなった?

 アメリカの対中戦争の象徴となった半導体規制。これにより、中国の半導体産業は大きく後退するとされた。スーパーコンピュータやAIに使われる高性能半導体の生産技術がないうえ、重要な製造装置の輸入もできなくなったからだ。
 しかし、中国ファウンドリの「中芯国際集成電路製造」(SMIC)は、3年かけて「Kirin 9000s」という独自のチップ製造に成功し、昨年発売されたファーウェイのスマホ「Mate」に搭載された。これで、中国は半導体国産化への自信を深め、7月には、7兆円規模を投じる半導体ファンド「国家集成電路産業投資基金三期」を始動させた。
 よって、「10年は実現できない」とされた最先端半導体は数年以内にできるようになるだろう。その結果、汎用半導体においては、2026年までには韓国および台湾を追い越し、世界最大のICウェハ生産能力を持つと見られる。

一時的に後退してもEVシフトは止まらない

 中国と言えば、いまはなんと言ってもEVである。
 その尖兵となったのがBYDだが、ここにきてテスラとともに販売が失速。欧州系自動車メーカーがこぞってEV導入計画を先送りしたので、世界のEVシフトにブレーキがかかっている。
 それでウケに入っているのがトヨタだ。HEV(ハイブリッド車)が絶好調となったので、なんと、2026年に年間150万台としていたEV戦略を100万台へと3分の2に減らしてしまった。
 しかし、これは裏目に出るだろう。EV失速は一時的なものに過ぎないから、やがて中国EVが主流になったとき、その後塵を拝すようになるだろう。
 中国の新車販売台数におけるEVの比率は、すでに20%を超えてイノベーター理論における「アーリーアダプター」(初期採用層)からアーリーマジョリティ(前期追随層)に移る段階になっている。こうなると、もう後戻りすることはない。

すでに自動運転タクシーが営業を始めている

 日本では中国EVを「安価で信頼できない」という声ばかりだが、侮ってはいけない。もはや中国は技術大国である。それに、温暖化対策でも世界の先端を行っている。
 EVと並ぶもう一つのイノベーション、自動運転車でも中国は最先端を行っている。武漢などではすでに、今年の3月からドライバーがいない自動運転タクシー(ロボタクシー)が営業している。これは、バイドゥーが始めたサービスで24時間営業である。
 ロボタクシーは、当然だが、運転席には誰も座っていない。予約をした人はドア上のタッチパネルに携帯電番号の下4桁を入力してドアを開け乗り込む。あとは、予約時に設定した場所に、自動運転で送り届けてくれる。中国では、クルマの運転は人間ではなくはAIがやることになったのである。
 さらに、輸送手段に使用するエネルギーが化石燃料から電気へと移行が進む「電動モビリティ」においても、中国は莫大な予算を投じて進めている。
 バッテリー、太陽光パネルにおいても、すでに中国は世界一である。(つづく)


この続きは11月21日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

 

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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