Published by
共同通信
共同通信
多くの年月と費用をかけてブランド農作物を開発しても、種苗の流出による模倣品などで利益を得られない。そんな「育種貧乏」の問題を克服しようと、正規品と証明する電子タグを商品につけて販売する取り組みを、岡山市のブドウ農家林慎悟さん(46)が始めた。(共同通信=北野貴史)
林さんの実家は100年以上続く農家。知人のブドウ農家で研修していた20代の時、「品種が生産者を生かす」と開発の意義を学んだ。一方で、種苗の海外流出による模倣品や正規ルート以外の不正取引で、多くの農家が適正な利益を得られていない問題があることも知った。
「不正を発見できる仕組みをつくらないと、ブランド力は維持できない」。ブドウの品種開発や栽培、販売の経験も重ねたことでそう考えるようになり、ITやコンサルタント分野を研究。電子タグを使った取り組みを2024年8月から始めた。
電子タグは無線で情報を読み取る「RFID」という技術を活用したもので、スマートフォンなどのカメラをかざすと、育種家である林さんの情報が表示される。RFIDを採用したのは、QRコードよりも複製が難しく、模倣を防いで消費者の安心感をより高められると考えたからだ。
林さんは現在の取り組みを「発展途上」とする。「効果と使用感を確かめながら、今後は多くの品種や生産者のメリットとなる仕組みをつくりたい」。そう考えている。