It’s okay not to be okay 〜大丈夫じゃなくても大丈夫〜

It’s okay not to be okay

大丈夫じゃなくても大丈夫〜

心のケア、あなたはどう考えていますか?

ニューヨークで暮らす日本人コミュニティー、特に駐在員や
その帯同家族の皆さんに向けて、心のケアの重要性をお伝えする新シリーズ。
第1回は、在ニューヨーク日本国総領事館の森美樹夫大使・総領事に話を聞きました。

森大使が、メンタルヘルスに関心をお持ちになったきっかけや背景についてお聞かせいただけますか?大使ご自身も、アメリカ、アフリカ、ヨーロッパ、オーストラリアなど長年にわたり、さまざまな海外拠点で活躍されてこられましたが、メンタルヘルスに関して、ご自身の体験も教えていただければ幸いです。

私が過去に在勤していた国には、先進国、途上国、邦人の多い国、少ない国といろいろあるのですが、いずれの地でも在留している日本人の中に、言葉の壁や文化、風習の違いなどがあることから、職場や私生活などの局面で周囲とうまくコミュニケーションがとれずに悩んでおられる方も少なからずおられました。

特に、2021年に外務省領事局長に就任してからは、コロナ禍もあって世界各国からのそのような話がたくさん入ってくるようになり、そうした方々の不安に寄り添い、孤独・孤立の問題をどう解決していくのかは大きな課題となりました。折しも、日本国内において、政府全体でこうした深刻化する社会的な孤独・孤立の問題に対して総合的な対策を推進していたところでもあり、外務省においても日本国内外のNPO団体と連携し、在外邦人の皆さんが抱える孤独・孤立およびそれに付随するさまざまな問題(DV、虐待、いじめなど)に対応するための取り組みを開始し、現在も継続しています。メンタルヘルスも含め、海外からも匿名かつ無料で利用が可能な日本語によるチャット・SNS相談窓口を設置していますので、ぜひご利用ください。
https://www.anzen.mofa.go.jp/life/info20210707.html
https://www.anzen.mofa.go.jp/life/chirashi.pdf

ニューヨークだけでなくアメリカで学校に通う日本人の子どもたち、特に駐在員の子どもたちは、言語や文化の違いからくるストレスや、アイデンティティーの葛藤を抱えることが多いと聞いています。大使ご自身のご経験から、こうした子どもたちが、異文化環境に適応しながら心の健康を保つために必要なサポートとその中で学校や地域コミュニティー、領事館など、子どもたちを支えるそれぞれの関係機関の役割分担、協業をどのようにお考えでしょうか?

子どもたちが異文化環境に適応しながら心の健康を保つためには、保護者、学校によるきめ細やかなサポートが欠かせません。また、幸いニューヨークには、言葉と文化の違いなどから生まれるさまざまな問題を解決するためのヘルプや福祉サポートを提供する、JASSI(Japanese American Social Service, Inc.)や、ニューヨーク周辺に在住する邦人のメンタルヘルスを含めた医療や福祉、支援グループの情報交換、相互連携の構築・促進を目的に設立された心と体の健康をサポートするネットワーク、JAMSNET(Japanese Medical Support Network)などの団体があり、当地に暮らす日本人の強い支えとなっています。

在ニューヨーク日本国総領事館においても、こうした地域の団体と連携しながら、子どもたちが生き生きと生活し、成長していくために必要なサポートをしていく所存です。

最後に、今後日本にとってもますます世界に飛び出して活躍するグローバル人材が必要になると思うのですが、今後総領事館、もしくはニューヨーク総領事館としては、どのような取り組みが必要だとお考えでしょうか? また、現在ニューヨークを含む海外で活躍中の日本人、特に次世代のリーダーとなる若者に向けて、アドバイスがあれば、お願いします。

在留邦人の皆様の安全確保は、総領事館の最も重要な責務の一つであり、皆様が安心して、安全に暮らすことができるよう、館員一丸となって取り組んでいます。こうした日本人の安全確保についての活動では、各日系人・日本人団体にも多くのご協力やご支援をいただいており、地域のコミュニティーと連携しながら、在留邦人の皆様が抱えるさまざまな問題に引き続き適切に対応していきます。

また、ニューヨークは、金融、文化、メディア、芸術、ファッションなど、さまざまな分野で世界の注目を浴びている都市です。また、当館が管轄する他の州においても日本との経済・文化交流は盛んです。私としてもさまざまな分野で頑張っておられる方々との人間関係を大切にしながら、さまざまな機会やイベントなども通じて各地の人々との友好関係を構築・増進していきたいと考えています。

ナビゲーター:小風華香(Haruka Kokaze)

コロンビア大学病院/職場メンタルヘルスリサーチアソシエイト兼日本ストラテジー主任アナリスト
ニューヨーク大学病院/アルコール依存症、薬物依存症フェロー
スタンフォード大学病院/ハートフルネスフェロー

父親の仕事の関係で東京、ニューヨーク、ヒューストン、ロンドンで育つ。幼いころから日本人駐在員とその帯同家族が精神的な問題に直面していること、また、日本特有の価値観や人間関係を理解するメンタルヘルス専門家がアメリカに不足していることを実感。現在はコロンビア大学のMental Health + Work Designラボで、職場メンタルヘルスリサーチアソシエイトおよび日本ストラテジー主任アナリストとして、日本国内の本社とアメリカ支社の駐在員とその帯同家族が直面するメンタルヘルス問題を担当。同時に企業とのパートナーシップ構築と成長支援にも注力している。兵庫県出身。

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