この記事の初出は2024年11月26日
政治家と官僚がトクをして庶民は貧しくなる
日本の政治家は、右派、左派、リベラル、保守、与野党を問わず、すべてバラマキ政策しか言わない。私たち政治家、所属政党が、窮状に陥っているあなたを助けますと言って、自分のものではないカネ(つまり税金)を勝手に分配することを公約する。そうして選挙戦を行う。
失業対策、企業支援、生活補助、子育て支援、教育無償化など、すべてバラマキだ。
こんなバラマキばかりになると、それを獲得するための争奪戦が起こり、政治家は「口利き」で儲けられる。また、官僚は采配を振るえるうえに、業者からの接待が増える。天下り先も確保できる。
こうして縁故資本主義(クローニーキャピタリズム)は強化され、本来の資本主義が持つ競争によるダイナミズムは失われる。と同時に、自由市場も侵害される。
本来、バラマキの恩恵に預かるのは一般国民のはずが、そうではなくなり、いくら働いても給料が上がらないという社会ができ上がる。
バラマキは、なにも近年始まったことではない。バブル崩壊以後、ずっと行われ、「失われた40年」を招いたのである。1990年代以降、日本政府は国債の大量発行により、1000兆円以上も負債を積み上げてきた。しかし、GDPは横ばいで、1人当たりのGDPはついに韓国にまで抜かれ、先進国レベルから転落した。
バラマキを助長する「積極財政」のマヤカシ
バラマキ政治を後押ししているのは、全政党に存在する「積極財政派」と、国民の間に蔓延する「積極財政世論」である。積極財政派は、積極財政により日本経済は復活すると説く。
財政支出を増やせば、消費や投資が喚起され、景気は上向く。雇用創出にも繋がる。それに伴い、税収も増える。また、社会インフラ整備に予算を投じれば、国土も強靭化され、いいことずくめであると言う。だから、財源がなければ国債をどんどん発行すればいい。国債は国内で消化されている限り問題ないとまで言うのだ。
しかも、最近では日本が成長しなかったのは、緊縮財政を続けてきたからで、その元凶は財務省であるという「ザイム真理教」信者が増えている。
まさに、“お花畑”思考と言うしかない。積極財政論は、それ自体は経済的に間違っているといは言えない。しかし、それを国債という借金でまかなうのは間違っている。
また、バブル崩壊後の1990年以来、日本が続けてきたのは緊縮財政ではない。バラマキのために国債を大量発行するという「放漫財政」である。
“お花畑”の積極財政派が国民を地獄に導く
さすがにもう放漫財政は続けられない。これ以上、赤字国債を発行できない。そんな瀬戸際に来ていることを、現在の超円安が示唆している。
日本は財政規律を重視していない、無視しているということが共通認識になれば、市場の円に対する信頼は失われる。ただでさえ国家債務のGDP比が世界第2位の252.36%(2023年度)に上る「借金大国」(第1位は破綻国家スーダン)が、国債発行による補正予算を組むというのは、さらに借金を重ねていくと言っているのと同じだからだ。
現在、スタグフレーションに陥っている国が、これ以上、中央銀行が国債を引き受ける「財政ファイナンス」を続けていけば、どうなるだろうか? 円安に歯止めがかからなくなり、ドル円はすぐにでも200円になるだろう。もちろん、物価上昇も止まらない。
そしてその先にあるのは、国債暴落、ハイパーインフレである。つまり、“お花畑”に住む積極財政派は国民を地獄に導こうとしている。そんな地獄が来る前に、富裕層から有為な若者たちまで、この国を出ていくだろう。
今回も日本特有のおざなり国会になるのか
臨時国会は12月28日から始まる。
石破首相の所信表明演説を皮切りに各党代表質問を経て審議に入り、補正予算案が成立すれば、12月21日に閉会するというスケジュールが立てられている。
しかし、この大事な時期に、なぜ期間が短い臨時国会なのか? もっと、期間を長くして、徹底的に議論・審議すべきではないのか?
じつは、日本ほど国会が開かれていない国はない。通常国会の会期は150日間(半年にも満たない)と短じかく、議員は臨時国会がなければ、1年の半分以上が休みだ。先進諸外国は、国会はたいてい通年である。これでは、掘り下げた議論、審議など望むべくもない。
しかも、日本には他国にはほとんどない「会期不継続の原則」がある。これは、継続審議が認められなかった法案は会期末で廃案になるという規定だ。
この規定があるため、与党が過半数の国会では、審議はおざなりになり、官僚ペーパーの読み上げという茶番が行われてきた。そして、予算案などは原文のまま成立してきた。
しかし、今国会は自公が過半数を握っていない。それだけに、野党の役割は大きい。自公と同じバラマキ政策を唱え、そのちょっとした差で論争するという政治は、もういい加減にして欲しい。(了)
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。