共同通信
人力で動かす観覧車がインドで今も現役で稼働し、子どもたちを楽しませている。以前より電力供給が安定化してきたことで電動の大型観覧車が既に主流になっているが、素朴さが根強い人気を支えている。(共同通信ニューデリー支局 岩橋拓郎)
「うわー、きゃー!」。北部ウッタルプラデシュ州ガルムクテシュワルで2024年11月上旬に開かれた祭りで、人力観覧車に乗った子どもたちが歓声を上げていた。所有者のアシフ・アムサリさん(36)と仲間たちがかごを手で押したり、鉄骨に乗って体重をかけたりして汗だくで動かす。
アムサリさん一行は1年のうち約8カ月は州内を中心に祭り会場を渡り歩き、その都度観覧車を設営する。かごや骨組みはトラックで運搬。地元当局の安全検査を受けたら営業開始だ。
料金は1回20ルピー(約36円)から50ルピーで、一度乗れば約10周は楽しめる。「値段は祭りの場所によって変え、田舎に行けば行くほど安く設定する」とアムサリさん。祭りの人出が多い時には1日約2千ルピーの収入になる。
体重制限はないと聞き、記者も乗ってみた。かごはスムーズに高さ約7メートルまで上昇し、祭り会場が遠くまで見渡せる。窓や屋根はなく、下降する時は風が体に直接当たり、つかの間の涼しさと多少のスリルを感じられる。勢いがつくと5秒ほどで1周する。
スタッフのローヒットさん(32)が観覧車の軸部分に腰を掛け、歩くように鉄骨を踏むたびに回転が速くなる。軸を使って鉄棒の前回りの要領で体を回転させることもあり、まるで曲芸師だ。
アムサリさんは「車と同じで、安全を心がけていても事故はある。回し役が転落したこともある」と明かす。それでも人気があるのは「動かしている人の姿が見えるからだろう」と言う。
アムサリさんは観覧車稼業を父親から引き継いだ。弟2人も観覧車の仕事で生計を立てている。ただ、人力観覧車の台数は減ってきているといい「私の息子は他の職に就くだろうな」と寂しげに語った。
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