共同通信
沖縄・八重山諸島や台湾に生息するカエルが、オタマジャクシでいる間は一切ふんをしないことを、名古屋大のチームがこのほど突き止めた。すみかの樹上の小さな水たまりを清潔に保つ効果がある。調査したのは、大学院特別研究学生の伊藤文さん(25)。水槽が汚れないことに気付いて研究し、論文にまとめた。「特殊な環境に適応する進化の一端を明らかにできた」と話す。
珍しい習性が確認されたのはアイフィンガーガエル。天敵を避け、オタマジャクシは木のうろや竹の切り株にたまったコップ1杯分ほどの水で育つ。父親は巣を守り、母親は餌を与えるなど、国内で唯一子育てをするカエルとして知られる。
伊藤さんが別の研究でこのカエルのオタマジャクシを飼育中、通常はふんで汚れる水槽が一向に汚れなかった。液体で排せつしていると考えたが、解剖すると、腸内には固形のふんがぎっしり詰まっていた。
その後の観察で、3~6週間でカエルの姿になり、その数日後に初めてふんをすることが分かった。水槽内のアンモニア濃度は他のカエルより大幅に低い。高濃度のアンモニアは有害なため、小さな水たまりを汚さないよう進化したとみられる。一部のハチやアリも幼生の間はふんをしないが、カエルでの発見は世界初。9月に米専門誌で発表した。
体内に多くアンモニアをためることの危険性も考えられ、どう対処しているのか疑問は残る。腸内細菌の組成が他種と異なることは既に分かっており、伊藤さんは「アンモニアの分解・吸収防止の機能があれば面白い。今後はその観点から調べたい」と意気込む。
豊かな自然が残る東京都八王子市でカエルを追いかけながら育ったという伊藤さん。修士論文の執筆に追われる今も、大学や自宅で飼育するカエルを「美しいな」「宝石のようだ」と眺めて癒やされている。来年からは博士課程で研究を続ける予定。「趣味と実益を兼ねています」と笑った。
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