共同通信
インド東部コルカタで現役世界最古とされるトラム(路面電車)が存続の危機にある。新設された地下鉄に乗客を奪われ、のんびり走るトラムが自動車の渋滞を引き起こしていると指摘され、当局が廃止を決めた。継続を望む声に押され、しばらくは運行を続けることになったが先行きは不確かだ。(共同通信ニューデリー支局=岩橋拓郎)
▽誇りから一転
チンチンチン―。車やバイク、歩行者に野良犬が無秩序に行き交うコルカタ中心部の車道上の線路を、軽快な汽笛を鳴らしながらトラムが進む。線路と車道には柵がなく、車が線路の上を走るため、たびたび停車を余儀なくされる。
コルカタは1772年に英総督府の首都になり、20世紀初頭まで英国のインド支配の拠点だった。建物や通りには英統治時代の面影が残る。
地元の博物館などによると、コルカタにトラムが走ったのは1873年。最初は馬が客車を引いていた。その後、インド各地の都市に普及したが、コルカタのトラムは1882年に蒸気エンジンを搭載、1902年に電化するなど先鞭をつけてきた。
2023年に運行開始150年を迎え、祝賀行事が開かれた。コルカタがある西ベンガル州政府のチャクラボティ交通相は、街の誇りだとした上で「このサービスを終わらせないことが最優先事項だ」と表明した。
ところが2024年になり「乗客はより速く移動できる交通手段を求めており、スピードの出ないトラムは渋滞の原因になっている」と方針を一転。かつては20以上の路線があったが、周辺に観光名所がある中心部の約1キロの区間以外は廃止すると決めた。
▽経営は厳しく
運行管理を担う西ベンガル交通公社の職員は「快適な地下鉄が走っているのに、あえて遅いトラムに乗る人は少ない。経営も厳しい」とこぼす。2024年9月にいったん運休したが、市民から反対の声が多く寄せられ、10月下旬に再開された。上層部の方針が定まらず、いつ廃止されるのか職員でも分からないという。
停車場はなく、トラムがスピードを緩めた時を見計らって開けっ放しの出入り口から飛び乗る。時刻表はなく1時間に数本が走る。運賃は距離に応じて6~7ルピー(約11~13円)だが、地下鉄は5ルピーからで価格面の優位性はない。
仕事で毎日乗車するというケーダースさん(55)は「自宅は地下鉄が走っていない地域にある。トラムはコルカタの遺産なので、廃止は良くない」と主張した。
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