共同通信

ロシアのウクライナ侵攻を巡り、両国の間でインドが独自に立ち回っている。モディ首相がロシアのプーチン大統領と抱擁して親密さを演出する一方、ウクライナのゼレンスキー大統領とも会談し平和的解決への支援をアピール。両首脳と接触することで自国の存在感向上を図る意図が透けるが、ロシア傾斜が目立ち、橋渡し役が果たせるかどうかは心もとない。(共同通信ニューデリー支局=岩橋拓郎)
2024年11月下旬、イタリアでの先進7カ国(G7)外相会議に招かれたインドのジャイシャンカル外相は「ロシアともウクライナとも対話しなければならない。それがインドのやろうとしていることだ。解決策は戦場にない」とイタリア紙に語った。
これまでも「どちらとも接触できる国は多くなく、われわれはもっと積極的になるべきだ」と発言。実際にモディ氏は侵攻開始後、両国首脳と会談し、2022年9月にはプーチン氏に「今は戦争の時代ではない」と苦言を呈した。ただ踏み込んだ批判は避け、2024年7月にロシアを訪問した際には抱擁を交わした。
モディ氏が抱擁の写真を公表した日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)では小児病院がロシアの攻撃を受け、多数が死傷し、ゼレンスキー氏は失望を表明した。モディ氏は1カ月半後にキーウを訪れ、ゼレンスキー氏とも会談した。
インド首相のウクライナ訪問は国交が樹立された1992年以来初めて。共同声明では領土保全や主権の尊重に触れたが、ロシアには全く言及しなかった。
インドがロシアに配慮する背景には、周辺国との関係が必ずしもうまくいっていない事情がある。中国、パキスタンとは領土問題で対立し、ネパールのオリ首相は2024年12月、就任後初の外遊先に慣例のインドではなく中国を選んだ。2023年はモルディブで親中派の大統領が誕生。中国と覇権争いをする上で、原油や武器を供給してくれるロシアとの良好な関係は安全保障に欠かせない。
ロシア国営石油大手ロスネフチがインドの石油精製大手リライアンスに日量50万バレル近くの原油を供給することで合意したことも2024年12月に判明。両国間で過去最大規模のエネルギー取引になり、蜜月関係は深まるばかりだ。
国連安全保障理事会ではロシア軍撤退を求める決議で棄権に回り、米欧による経済制裁にも加わらない。プーチン氏が2025年インドを訪問するとの見通しもある。インドがウクライナや米欧のメッセージをロシア中枢に直接伝え、有効な働きかけができるのか不透明さが増している。



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