アメリカ移民取締当局は28日未明、ニューヨーク・ブロンクスで誘拐・暴行・窃盗容疑の不法移民を逮捕した。不法移民の強制送還に署名したトランプ大統領の大統領令に沿ったもの。しかし、ニューヨーク市内には、労働許可を待つなど「書類」を持たない移民や亡命希望者も多くおり、取り締まりを恐れて子どもを登校させないなど不安と混乱が広がっている。
アメリカ国土安全保障省の新長官クリスティ・ノーム氏は28日未明、Xで市内での逮捕を発表した。摘発に当たったのは、同省傘下のアメリカ移民税関捜査局(ICE)やニューヨーク市警察(NYPD)など。既に前週からニュージャージー州ニューアーク、イリノイ州シカゴなどで大量の摘発が始まっている。
トランプ氏は就任後、学校や教会などの従来の「保護場所」においても移民の逮捕を許可する方針を発表。ニューヨーク市内のシェルターでは、保護者の多くが子どもを登校させることをためらっている。シェルターが一網打尽に摘発されるのを恐れる声も上がっている。歴史の教師でシェルターから通う子どもも教えるJ.C.さんは「毎朝誰が登校するのか教師も心配でならない」と話す。
ニューヨーク・タイムズによると、2024年の時点でアメリカに滞在する書類がない不法移民の数は推定で1400万人にも上る。そのうち6割が不法滞在で、4割が亡命申請中であったり、子ども時代に親に連れられて来た不法移民を保護する「若年移民に対する国外強制退去の延期措置(DACA)」などの期限付きの「一時的な許可」を得ている。トランプ氏はこのうち、犯罪歴がある不法滞在者を優先して逮捕し、強制送還する方針だ。しかし「一時的な許可」をトランプ氏が許可するのかはまだ不明であり、「いずれは強制送還されるのではないか」といった恐怖感が高まっている。
不法移民の多くは、レストランやホテルなどのホスピタリティー業界で働き、アメリカ経済を支えている。「一時的な許可」は得ているが労働許可を得ていない状態でも、レストランやスーパーマーケット、UberEATSのデリバリーをしているケースは多い。アメリカのメディアによると、Amazonは人手不足を防ぐため、亡命申請中や難民の雇用を積極的に進めてきたが、トランプ氏の大統領令が立ちはだかった。
ニューヨーク市内のレストランなどでは、不法移民の従業員が出勤してこないため、求人を始めたところもある。
(写真・文/津山恵子)
編集部のつぶやき
地下鉄構内のチュロスやフルーツ売りの屋台が消え、赤ちゃんを背負ったチョコレート売りの若いお母さんたちも消えました。知人は、ニューヨーク市警察(NYPD)に勤務するパートナーから「(一目見て、マイノリティーと分かる人は)外出する際に、グリーンカードやビザスタンプが押されたパスポートを携帯した方が安全」とのアドバイスを受けたとか。路上で職質されて、そのまま連行される可能性もあるってこと?!
(A.K.)
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