ニューヨークでの生活では驚きが「スタンダート」と化している。筆者は27歳、この夏憧れのニューヨークにやって来た新参者だ。日本(神戸)で人生の大半を過ごしたせいか、いちいちビックリするようなことが毎日のように起こるので、文化の違いやカオスな出来事を中心にポップにつづっていくことにした。
〜トイレで「お色直し」がしたい〜
前回のエピソードで、日本でいう「便利アイテム」がアメリカにはないので困っている、といった話を書いたが、今回はその続きで「とある場所」についての気づきを紹介したい。

ニューヨークには気軽に使える公共トイレが圧倒的に少ない、というのは観光で来た人も感じたことがあるかもしれないが、トイレが少ないということは「お色直し」の鏡もないということ。日本ではほぼ全駅にリノベーションされたピカピカのトイレが配置してあり、用を足すためのスペースだけではなく、赤ちゃんのオムツ変えのための部屋や、大きめの鏡が設けられたお色直しコーナーも設置されている。
このお色直しコーナーというのは便利なもので、筆者はホームを降りて、人に会う前は必ずといっていいほど立ち寄っていた。髪型はバッチリ? 口紅の濃さは大丈夫? 服に何かついていない?など、最終チェックができるだけでなく、最近ではコンセントやアメニティ(綿棒やコットンなど)が備わったりと進化を遂げているので、金曜の仕事終わり(華金)に立ち寄ると、デートや飲み会に出かける女性たちが、鬼の形相で鏡と対峙している姿も目撃できる。
と、長々と日本の「お色直しコーナー」への愛を語ってしまったが、ニューヨークにはこれが存在しない。なので来たばかりの頃は正直、人と駅で待ち合わせる度に、最後のチェックができていない “未完成” のような気がしてならなかったのだが、6カ月が経過し、ようやくお色直ししたい気持ちが抑えられてきたように思う。
なぜ、必要なくなってきたか? それは「そのままでいい」というマインドセット。日本人の性格上、人にどう映るか、をつい考えてしまうが、きっとそのままでとてもビューティフル。ニューヨーカーが「自然体」に映るワケは、きっとこのあたりの自信が大きく影響しているのだろう。
マインドセットって言われても・・・という人には、この映画をおすすめしてみたい。「アイ・フィール・プリティ!人生最高のハプニング」(2018年)。そのままで素敵やで? そんな気持ちにさせてくれます。

著者のプロフィール

ナガタミユ(Miyu Nagata)エディター/ダンサー
兵庫県出身の27歳。幼少期に観た「コーラスライン」をきっかけに舞台芸術の世界にどっぷりハマって以来、20年以上踊り続けている。また、日本の出版社で編集者として活躍したのち「書いて、踊る編集者」としてさらなる飛躍を遂げるため、2024年8月から拠点をニューヨークに移す。
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