2025.02.11 DAILY CONTENTS NEWS

トランプ政権、NY市長の起訴取り下げ指示 司法省、法の裏付けなく再選支援

米司法省は10日、ニューヨーク市のエリック・アダムズ市長に対する収賄容疑の起訴を取り下げるよう、マンハッタン地区検事に指示を出した。同日、ニューヨーク・タイムズが伝えた。

アダムズ市長にはトルコの他、中国やカタールなど5カ国との癒着疑惑がある。写真は今年の春節行事に出席した市長。アダムズ市長の公式X(@NYCMayor)からスクリーンショット=2025年2月6日

理由として、起訴によって、アダムズ氏がトランプ大統領の推進する不法移民取り締まりに協力できなくなること、今年の市長選に影響が及ぶことになることなどを挙げている。そして、市長選が終わるまで「アダムズ氏を標的にしたり、捜査をしたりしないように」と明言している。

今回の指示は、従来の慣行である連邦検察の独立に対する著しい政治の介入だ。元連邦検察官、キャリー・コーエン氏は「司法省は、事実や法律に基づいて決定を下していない」と批判している。

アダムズ氏はトランプ氏にすり寄る態度を見せてきた。トランプ氏を批判する発言はなく、フロリダ州の自宅「マー・ア・ラゴ」を訪問したり、就任式に出席した。トランプ氏がアダムズ氏に恩恵を施した形だ。だから、トランプ氏の不興を買えば、起訴が蒸し返される可能性はある。

地区検事は2021年からアダムズ氏周辺を捜査。トルコ領事館建設を巡り、検査に手心を加えた見返りとして、10万ドル相当の旅費負担や違法な献金を受けたとして昨年9月、起訴に踏み切った。アダムズ氏は当初から「法に抵触したことはない」と主張。弁護士は「市長の言い分が通ることは間違いない」と話している。

アダムズ氏は昨年12月、「起訴に関しては弁護団に任せてある。私はニューヨーク市のためにやるべきことを推進する」と発言した。今回の司法省の指示はそれに反している。市の会計監査官で市長選のライバル、ブラッド・ランダー氏は「ニューヨーカーのために立ち上がるのではなく、トランプに寄り添っている」とコメントしている。

編集部のつぶやき

1月6日議事堂襲撃事件の懲役囚1600人が、大統領令で釈放。加えて、起訴されたアダムズ市長が、大統領のフロリダの自宅に詣で、大統領就任式にも顔を出して、ワシントンの司法省から「起訴取り下げ」を勝ち得たーーという記事。フロリダに行った時、ご近所さんがAre you kidding?と驚いていたが、もうこれは「無法状態」。ホワイトハウスに詣でれば、罪はチャラになると思う人が増えているが、それをニューヨーク市トップが利用するとは、絶句。(K.T.)

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