2025.02.14 COMMUNITY DAILY CONTENTS NEWS インタビュー

アメリカで引っ張りだこの日本人メイクアップアーティスト Kento Utsubo「ランウェイで完成形を見たときの達成感」

Kento Utsubo(左)さんとGUVANCHのデザイナー、クヴァンク・アジャジョマイブ(Guvanch Agajumayev)

アメリカのファッション業界で、メイクアップアーティストとして第一線で活躍する Kento Utsubo さん。VOGUEや Numéro、Harper’s Bazaar などの有名雑誌や、ヘイリー・ビーバーをはじめとするセレブ、そして秋と冬にはニューヨーク・ファッション・ウィークが彼を必要とする。

Kento Utsubo(左)さんとGUVANCHのデザイナー、クヴァンク・アジャジョマイブ(Guvanch Agajumayev)

クリエイティブで適応能力の高いスキルにハンブルな姿勢と、「メイク前のスキンケア」にも定評があるKentoさん。彼がメイクを担当したブランド、GUVANCH(グヴァンチ) のショーの裏側を取材した。

アシスタントに指示をするKentoさん

◆ 当日の朝5時にメール「全てのモデルに…」

GUVANCH はニューヨークに拠点を置く独立系ブランドで、グヴァンチ・アジャジョマイブ(Guvanch Agajumayev)によって2019年に設立。ソーホーのアトリエで全て手作りされる作品は、ユニセックスならではの強さと繊細さを兼ね備えたデザインが特徴で、彼の服を着こなすモデルには、トランスジェンダーも多い。

ニューヨークに拠点を置く独立系ブランドGUVANCH

今回はそんな GUVANCH の秋コレクション「Dowzah」のメイクアップを担当することとなった Kento さん。ルック数は全45、地獄、煉獄、天国への旅がテーマとなっており、「今回のショーでは40人を超えるモデルが参加しました。メイクのディレクションも事前に決まっていたのですが、ショー当日の朝5時にメールで『モデル全員に個別のメイクを施す』との指示が入るなど、大きな変更がありました(笑)」と、Kento さん。

通常、ファッションショーではメイクやヘアの方向性が統一され、全てのモデルに同じルックが施されることが多い中での大幅なチェンジ。「チーム全体をまとめながら、各モデルのメイクの進行を管理することが非常に大変でした。限られた時間の中でデザイナーのビジョンを反映させつつ、それぞれに最適なメイクを施すことは、他のショーと比べても特にチャレンジングな経験でしたね」

約30人のアシスタントとKentoさんのチームメンバー5人で臨んだ現場

◆ スキンケアは単なる「準備」ではない

メイクに取りかかる前には、30人を超えるアシスタントが集められ、モデルを使ったデモンストレーションを行いながらスキンケアから基本のメイク、重要ポイントやコツが伝授される。スキンケアは Kentoさんが「重要な要素」としている点で、デモンストレーション中にも「ジャパニーズはスキンケア大好きだよね〜」とジョークを交えながら、長時間メイクをしていても崩れないためのスキンケアを伝授した。

デモンストレーションでスキンケアを施す様子

「スキンケアは本当に重要です。特に私は肌の質感や水分量をしっかり見極め、メイク前のスキンケアで肌を最適なコンディションに整えることを大切にしています。当日、モデルと顔合わせをしたときにその日の肌のコンディションを見極め、理想とするメイクのテクスチャーにもっていけるよう、スキンケアでバランスを取るのが私のスタイルです。メイクのテクニック以上に、モデルの肌の状態を万全に整えることを意識しています」

丁寧なスキンケアが肝

また、スキンケアは単なる「準備」ではないと Kento さんは考えており、「モデルとの大切なコミュニケーションでもある」と話す。「メイクに入る前に、心地よいスキンケアを施すことで、リラックスした状態でメイクに移ってもらえるように心がけています。モデルが満足した表情でメイクルームを出ていく姿を見ると、自分の仕事がメイクだけでなく、その人の気持ちを整えることにもつながっていると実感しますね」

日本発のスキンケアブランドyayoiがプロダクトサポートに

また今回、そんなスキンケアアイテムを日本のスキンケアブランド yayoi がサポート。普段の撮影などでも Kento さんが愛用しているブランドだといい、「yayoi さんにプロダクトサポートをお願いしたところ、準備期間が1週間もないのに、すぐに『力になります』と快く協力してくれました。さらにアメリカまで飛んできてくれ、一緒にこの舞台に立てたことが本当にうれしかったです」と Kento さん。

モデルからも評判が良かったyayoiの製品

「メイクチームからはスキンケアの評判がとても良く、『どこで買えるの?』『もっと手に入らないの?』といった声が飛び交っていました。ショーが終わって片付けをしていると、モデルたちが寄ってきて『スキンケアのおかげでまだ肌がモチモチしてる!』と話してくれたのが印象的でしたね」

◆ 「緊張感の中で作り上げること」

「今回のファッションウィークでは、企業としてプロダクトサポートをしてくださった yayoi さんをはじめとする企業の方々、そして友人としてサポートしてくれた仲間たちのおかげで、全力を尽くすことができました。今回こうしてインタビューに来てくださったデイリーサンさん、カメラマンやスタイリスト、ヘアメイクの友人たちがプライベートでも協力してくれたことを本当にうれしく思います」と、満足気な Kento さん。

Kentoさんと同郷出身で長年の付き合いだというYuhi Kimさんはヘアを担当

「本当に素晴らしい経験で、このような機会をいただけたことに感謝しています。ファッションショーでは毎回新たな挑戦がありますが、それがこの仕事の魅力でもあり、今回もクリエイティブな方向性から実際の仕上がりまで、何もかもがうまく噛み合い、ランウェイで完成形を見たときはとても達成感がありました」

ショーの直前、最後の仕上げに取り掛かる

最後に、ファッションウィークにかける思いを聞くと、「私にとってファッションウィークとは、1週間の中でさまざまなデザイナーやアーティストたちがこの街に集まり、新作を発表する特別な場です。そこには多くのアーティストが関わり、それぞれのクリエイティブを発揮しながら、新しい表現を生み出せる時間です」との答えが返ってきた。

「短期間での挑戦だからこそ、集中力や瞬時の判断力が求められますが、その緊張感の中で仲間と支え合いながら作品を創り上げることに、大きなやりがいを感じます。毎シーズン異なるチームと仕事をすることで、新しい技術や視点に触れ、それが次のステップにつながっていく。今回の経験を活かし、今後もさらに挑戦を続けていきたいです」

才能、努力、技術がつながり、大きな力となって輝くファッションウィークで、「メイクアップ」という立場から華を添える Kento さん。常に進化し続けるファッションの中心地、ニューヨークでの挑戦はまだまだ続く。

取材・文/ナガタミユ
写真/kohei kawashima

Kento Utsubo(ケント ウツボ)

公式インスタグラム
https://www.instagram.com/kentoutsubo/

公式YouTube
https://www.youtube.com/c/KENTOMAKEUP

関連記事

KENTOが語る、ニューヨークで働くメイクアップアーティストのリアル

ファッションショーのメイクの仕事って? ニューヨークファッションウィークの裏側

NYファッションウィークにかける思い「後悔のない仕事をしよう」日本人デザイナー・土佐尚子の躍進

RELATED POST