「え、共産主義の国?」
と、デザイナーのアニタさんは驚いた。トレーダー・ジョーズの卵売り場に「卵は一人1日1パックまで」との貼り紙。しかも、店員がまるでお客を見張るかのように棚の前をウロウロしている。

卵の価格は1月、前年比で53%も上昇した(米商務省、消費者物価指数=CPIによる)。鳥インフルエンザの流行という特殊な要因によるものだが、実は価格高騰は食品全般にわたる。卵に続いて塩・香辛料が10.3%、インスタントコーヒー(7.1%)、ベーコン(6%)、豆類(5.6%)、牛ひき肉(5.5%)、キャンディー・ガム(5.4%)と続く。
この結果、家計のうち食品の支出は、1年前に比べて1.9%も上昇。レストランや学食にいたっては、3.8%負担が増えた。
エネルギー価格は、ガソリンが4.9%、電力が1.9%と上昇率は大きい。車両保険(11.8%)、大学の教科書(10.7%)、郵送料(8.4%)、病院・高齢者ケア(8.1%)、女子アパレル(8%)、タバコ(7.9%)、航空運賃(7.1%)、獣医(6.6%)、スポーツイベント(6.5%)、男子アパレル(6.1%)と生活に必要なサービス関連も軒並みに急上昇している。
SNSでは「トランプは大統領になったら、インフレをストップさせると言っていたのに(絵文字の涙顔)」という声も聞かれる。
メキシコ料理レストランを経営するアルマンド・デ・ラ・クルーズさんは、困り切っている。「卵だけではない。ブランチに必要なベーコンやハム、レタスも値上がりした。それでもお客にたくさん来てもらうしかないので、ハッピーアワーを長くした」と話す。
価格高騰が止む見通しは立っていない。トランプ大統領は、中国からの輸入品に10%の関税を課すと表明。引き上げが始まった場合、その打撃は大きい。「メイド・イン・チャイナ」の製品に囲まれた生活をしている市民に負担が跳ね返ってくる。
トランプ氏が2018年、中国製品に20%の関税を課した際、洗濯機の価格が3カ月以内にほぼ関税の引き上げ率に匹敵する18.2%も上昇した(ウォール・ストリート・ジャーナルによる)。
労働省が12日発表した1月の消費者物価指数は前年比3.0%上昇。前月比では0.5%上昇と、2023年8月以来、約1年半ぶりの大幅な伸びを記録した。(津山恵子)
編集部のつぶやき
物価は下がるどころか、上がるばかり。トランプが大統領になれば物価が下がり、くらしは楽になると思って投票した有権者たちは今、どんなふうに思っているのでしょうね。(A.K.)
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