共同通信

アサド政権が崩壊したシリアの首都ダマスカスで、老舗アイスクリーム店「バクダシュ」が繁盛している。ピスタチオがふりかかったアイスは国民が愛する人気の甘味だが、2011年以降の内戦により、地方から来店するのは非常に困難だった。「自由の味をかみしめてほしい」。経営者の一人、ウィサム・バクダシュさん(42)はそう語り、国の安定を願った。(ダマスカス共同 横田晋作、勝井潤)
「おいしい!」。北西部イドリブから十数年ぶりにダマスカスを訪れたマナルさん(33)が声を弾ませた。内戦前は首都に来るたびに通ったという懐かしの味。今回は夫と子ども4人を連れて首都に入った後、真っ先に訪れたという。「街並みはすっかり変わってしまったが、再び食べることができて幸せ」と笑顔を浮かべた。
バクダシュは1895年創業。旧市街にあるスーク(市場)に店を構えている。記者が訪れたのは午前10時半ごろだったが、既に多くの客でごった返していた。自動小銃を持ち、長髪にひげをたくわえた戦闘服姿の旧反体制派メンバーも舌鼓を打っていた。
原料は牛乳やランの根から作る粉末などで、粘り気があるのが特徴だ。筒状の冷凍装置で凍らせ、店員が力いっぱいたたいて軟らかくしていく。値段は約1.7ドル(約270円)。政権崩壊前でも1日当たり4千~5千人が訪れたという。
アサド政権は秘密警察を駆使し「壁に耳あり」と言われる密告社会を形成した。ウィサムさんは「国民誰もが自由に発言できなかった。まるで囚人のようで、暗闇の世界だった」。政権崩壊した翌日の12月9日は祝福する人々が店に押し寄せ「経験した中で最も混雑した1日になった」という。
2010年以来初めて首都を訪れた北部アレッポのアナスさん(25)も一口味わうと頬を緩めた。「将来的に起業したい。豊かな国になってほしい」





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