共同通信

国内外で人気の高級魚ノドグロ(アカムツ)の一大産地を目指し、富山県水産研究所(富山県滑川市)が奮闘している。2024年12月までに世界で初めて、水槽で飼育した親の受精卵から稚魚の育成に成功。2025年1月下旬、富山湾に約1400匹を放流した。担当者は「安定した稚魚の生産供給を目指し、さらに研究を深めたい」と意気込む。(共同通信=金森純一郎)
ノドグロの正式名称はアカムツと言い、主に北陸や山陰地方の水深100~200メートルに生息する。脂が乗ってうまみが強く、高級魚として近年は欧米などでも人気が高い。一方、富山県での漁獲量は年間約10~20トンにとどまり、地元漁業者から「稚魚を放流して増やしてほしい」という声が上がっていた。
研究所は2011年、水槽内での産卵、育成の研究に着手したが、詳しい生態が分からず、難航した。2013年に新潟市の水族館「マリンピア日本海」などとの共同研究で、漁船に揚がったばかりのアカムツに人工授精させ、稚魚を育てることに成功。2016~22年ごろ、約22万匹の稚魚を試験放流した。しかし、船上で人工授精に適した卵が採れる確率は低く、産卵期は台風シーズンと重なっている。この方法で効率的な稚魚生産は難しいとみて、さらに研究を進めた。
水槽内の温度を変え、周りを暗幕で覆うなど自然界の産卵環境に近くなるよう工夫を重ね、水槽で飼育した天然の親魚15匹から得られた受精卵をふ化させ、稚魚約5千匹を5センチほどまで育てることに成功した。同様の研究に取り組む山形県水産研究所(山形県鶴岡市)では、水槽内でアカムツの産卵までは成功していたが、受精卵を得ることはできていなかった。
今後の課題は、性別を均等にすること。人工的に魚を育てると雄に偏る傾向があり、アカムツの場合、約98%が雄になってしまう。雌を増やすため女性ホルモンに似た成分「大豆イソフラボン」を餌に混ぜる実験を進め、一定の効果が出始めたという。
アカムツ担当の福西悠一主任研究員(43)は「大量放流には、天然魚に影響を与えないよう性別の割合を保つことが大切。この課題が解決できれば事業化に向け大きく進む」と話した。


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