トランプ・ゼレンスキーの言い争いは、度を超えていた。これを目撃してしまった以上、この世界が激変するのは間違いなくなった。
なぜなら、トランプは絶対に謝らない、絶対に自分の非を認めないからだ。よって、ウクライナ戦争はほぼ永遠に続く。関税戦争は激化し、世界経済は大きく落ち込む。自由と人権、民主主義は後退し、世界は、弱肉強食のジャングルと化す。
結局、トランプが表舞台から消えるまで、じっと待つほかないのだろうか。
国務長官ルビオはウクライナと修復可能と
トランプ & JDヴァンスとゼレンスキーの言い争いを、私は、繰り返し見た。今回の会談前から、なんとなく話はまとまらないのではと思っていたが、まさか、ここまでの事態になるとは、想像を超えていた。
トランプとJDヴァンスには、これっぽっちもウクライナを助けるという気はないことがよくわかった。彼らは、この哀れな元コメディアンを完全にバカにし、「感謝の意が足りない」と言うのである。
もうこの前代未聞の「決裂」を、これ以上述べてみてもバカらしいので、その後の展開で、私が思ったことを以下述べていきたい。
決裂から2日経って、ABCテレビに出演した国務長官マルコ・ルビオは、「ウクライナを助けようとしている事実を理解してほしい」と視聴者に訴えた。そして、今後のウクライナとの関係について修復は可能と示唆した。
しかし、「プーチン大統領と話せるのはトランプ大統領だけ。戦争を止めたいならトランプ大統領に任せるべきだ」と言うのだから、それは違うだろうと思った。
ネオコンのシンパがトランプの“忠犬”に
ルビオは、曲がりなりにもアメリカの対外政策全般を担う国務長官である。その権限は、ほかの国の外務大臣よりはるかに大きい。
その彼が、戦争を止めたいなら、トランプに任せろと言うだけでいいのだろうか。彼は、その前日には、「(ゼレンスキーは)謝罪するべき」とも言っている。極端なたとえだが、これは、親分の言うことを聞けと言っている子分の言い草である。
キューバ難民の子供としてアメリカの民主主義・自由社会のなかで教育を受けて政治家となった彼が、なぜ、こんなことを言うのだろうか。
かつてルビオは、上院議員時代に、ネオコンでマイダン革命の黒幕である国務省ナンバー3(当時)のビクトリア・ヌーランドを議会で詰問したことがある。
しかし、それは単なる駆け引きであり、むしろ、彼はネオコンに近い考えの持ち主だ。すなわち、「自由と民主主義を世界に広める。そのためには独裁・権威主義国家は力を使ってでも倒す」と言うネオコン思想のシンパである。
それが、共和党予備選でトランプにあっさり敗れると、トランプの忠実な追随者=“忠犬”となった。
トランプの“茶坊主”JDヴァンスと同じ
ルビオは、ネオコンの牙城の一つ、「アメリカ新世紀プロジェクト」(PNAC:Project for the New American Century,)と深い関係を持ってきた。彼は、トランプが「大きな間違い」と非難した2003年のイラク侵攻を支持したし、イランに対してより厳しい制裁を主張した。ウクライナに関しては、早くから軍事援助を支持した。
トランプと一致するのは、対中強行路線だけで、人の意見を聞く「良識派」と見られてきたが、トランプに取り込まれると変わってしまった。かつてトランプを「ヒトラー」「イディア(idiot)」(足りないバカ)と言ったにもかかわらず、権力欲から変心してトランプの“茶坊主”となったJDヴァンスと同じだ。
それにしても、政権内の幹部や共和党議員たちのトランプシンパぶりは目に余る。
別に私は民主党シンパではない。ただ、アメリカが自由と民主主義のリーダーであり、それを世界に広める国でなければならないと思っているだけだ。その観点から見ると、次に挙げる人間たちはクズだ。独立自尊のリバタリアニズムを忘れてしまっている。
“親分”トランプを祭り上げる“子分”たち
米メディアの報道によると、トランプ・ゼレンスキー決裂後、政権内、共和党内には、ゼレンスキーに対して「辞任しろ」と言う声が相次いでいるという。
そのなかで最低と言えるのが、下院議長のマイケル・ジョンソン(ルイジアナ州選出)だ。彼は、「ゼレンスキーが感謝の気持ちを持って交渉のテーブルに戻るか、さもなければほかの誰かが国を率いる必要がある」と、2日のNBCテレビで言い放った。
親ウクライナとされる共和党重鎮の上院議員リンゼー・グラム(サウスカロライナ州選出)までも、「ゼレンスキーが辞任して、われわれがビジネスをできる別の誰かを送り込むか、あるいは彼が変わる必要がある」と述べた。
フロリダ州の下院議員から大統領補佐官(国家安全保障問題担当)となったマイケル・ウォルツは、CNNで「われわれと対話し、最終的にはロシアとも交渉して戦争を終結させられる指導者が必要だ」と、“親分”トランプを祭り上げた。そして、 停戦の条件として、ウクライナ側に領土での譲歩を求めたのである。
この続きは4月3日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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