2025.04.11 JAPAN NEWS

富山の版画作品、長年交流インドネシアへ

Published by
共同通信
金守世士夫さんの版画作品をインドネシアの小学校に寄贈した妻の嘉子さん=2025年1月、富山市

 インドネシアとの交流を続けた富山県高岡市出身の版画家、金守世士夫さん(1922~2016年)の作品2枚が1月、現地の小学校に寄贈された。妻の嘉子さん(88)と共に1980年代から30年以上インドネシアに通い続け、少数民族の貴重な民芸品を収集した。2人を温かく受け入れてくれた国で作品を大切にしてもらえたらとの思いを込めて贈り、嘉子さんは「お礼の気持ちを示したかった」と話す。(共同通信=堤悠平)

 首都ジャカルタの南西部にある南タンゲラン市の「ひかり小学校」。金守さんが1990年代に制作した「雷神」「蝶々」と題した版画2枚が図書館に飾られ、子どもたちの興味を引きつけている。

 同校は富山市を拠点とする「インドネシア教育振興会」が2011年に開いた。日本の幼稚園や小学校1~6年に当たる約500人が通う。同会の代表理事窪木靖信さん(59)が今年1月、小学校に2枚を持参し寄贈。子どもたちから「どうやって作るの」と質問攻めにあった。窪木さんは「今後、学校で版画教室も開きたい」と話す。

 金守さんは戦時中、県内に疎開した版画家棟方志功に師事し、山や湖をモチーフにした幻想的な木版画で知られた。

 新聞で読んだインドネシアの少数民族の暮らしに興味を持ち、嘉子さんと共に現地を訪れるようになった。2023年には収集した民芸品約2千点が、国立民族学博物館(大阪府)に寄贈された。

 好奇心旺盛な金守さんはインドネシアの人々にも富山弁で話しかけた。嘉子さんは「気付けば金守の周りには子どもたちでいっぱいだった」と振り返り、民芸品のお返しにノートなどの学用品を届けた時の子どもたちの笑顔が忘れられないという。

 今回の寄贈について嘉子さんは「学校は作品を末永く愛してもらえる場所だと思う」とする。インドネシアを最後に訪れたのは2011年。「現地の方々に本当にお世話になった。もしかなうなら、もう一度行きたい」と目を細めた。

金守世士夫さんの版画作品2枚をインドネシアの南タンゲラン市にある「ひかり小学校」に届けた「インドネシア教育振興会」代表理事の窪木靖信さん(中央)=2025年1月(同会提供)
インドネシアの南タンゲラン市にある「ひかり小学校」で、寄贈された金守世士夫さんの版画作品2枚を掲げる子どもたち=2025年1月(インドネシア教育振興会提供)
インドネシア・南タンゲラン市「ひかり小学校」
インドネシア・南タンゲラン市「ひかり小学校」

RELATED POST