ナチス略奪の絵、所有者の孫に 75年越し、博物館で返還式

 【12日付amニューヨーク】75年以上前にナチスドイツが略奪したルノアールの絵が12日、元所有者の孫でパリ在住のシルビア・スリッツァーさん(59)に返還された。マンハッタン区のユダヤ遺産博物館で同日、返還式が行われた。
  「庭の中の2人の女性」というタイトルのこの絵はルノアール晩年の作品。第2次世界大戦前、ユダヤ人美術収集家のアルフレッド・ウェインバーガーさんが所有、パリの銀行で保管していたが、1941年のパリ侵攻の際に略奪された。戦後、ウェインバーガーさんは絵の行方を追い続けてきたが、発見できず77年に亡くなった。
 ナチスドイツの略奪美術品の捜査に当たっている米連邦捜査局(FBI)と連邦検察局によるとこの絵は75年に市場に浮上。77年、99年と転売され、2013年、クリスティーズのニューヨーク支店で競売に出品された。それを知ったスリッツァーさんの弁護士がFBIに通報。今回の返還に至った。スリッツァーさんは、「当局の努力に感謝する。正義が勝つことが証明されたのは人間としてユダヤ人として重要」と話した。スリッツァーさんはナチスドイツによって財産を失ったとして、ドイツとフランス政府から賠償金を受け取っており、賠償金返却のため絵を売却する予定だという。