【5日付ニューヨークタイムズ】ニューヨークの市井の人たちを撮った写真家、サイ・カッテルソンさんが11月24日に亡くなっていたことが分かった。95歳だった。
1923年、ブロンクス区出身。エンジニアを目指しマンハッタン区の進学校、スタイベサント高校に入学したが、世界恐慌で家庭が経済的に困窮、中退した。47年、ニューヨーク市を拠点とする左翼系の記録写真家集団「フォトリーグ」に参加。地下鉄に乗り、街を歩き、ニューヨーカーの飾らない姿をテーマに芸術性の高い作品を生み出し、次世代のストリートフォトグラファーに大きな影響を及ぼした。
代表作は歩道を歩く人の腰から下だけを収めた写真。大きな水たまりを避けて歩く全身がその水面に投影されている。地下鉄3番街線の車内にたたずむ女性を撮った48年の作品は当時流行った虚無的な犯罪映画(フィルムノワール)の1シーンのようだ。芸術評論家のビビアン・レイノアさんは、「被写体に対する尊敬の念が現れている」と評している。
51年、フォトリーグが「赤狩り」で解散を余儀なくさせられると、ファッション写真家として活躍。その後はコラージュなどの手法を駆使した芸術作品を発表した。