連載189  山田順の「週刊:未来地図」 2019年の世界はどうなる?(2の続) 米中戦争の主戦場は「関税」から「半導体&5G」、 そして最終的に「金融&通貨」へ!

なぜソフトバンクの通信障害が起こったのか?

ファーウェイ CFO逮捕の翌日、日本ではソフトバンクの通信回線の大規模な障害が起こった。その原因をソフトバンクは「スウェーデン通信機器大手エリクソン設備のソフトウエアに異常が発生したため」と発表した。また、エリクソン側も、日本だけでなく、英国のO2(オーツー)など世界11カ国の通信事業で障害が発生したことを発表して謝罪した。
 エリクソン側の説明によると、原因はLTE通信網内にあるソフトウエアで、デジタル証明書の期限が切れていたことで、これはエリクソンのミスだという。
 しかし、この原因説を不審に思う声が一部で囁かれたので、紹介しておきたい。
 ソフトバンクは2017年に、5Gの実証実験に関する契約をエリクソンとフィンランドのノキア、そしてファーウェイとZTEの4社と締結している。つまり、この4社から中国勢が消えることと、今回の通信障害は関連があるのではないかというわけだ。
 実際、5Gインフラに関しては、現在、この4社がほぼ独占している。したがって、ファーウェイとZTEを排除すると、5Gの設備は事実上、エリクソンとノキアの2社独占となってしまう。つまり、エリクソンとノキアには、降って湧いたような「特需」が訪れたのである。
 このことを念頭に、あとは通信障害の本当の原因を推察してほしい。

なぜか対中政策だけは的を外さないトランプ

 さて、ここからは、「関税」「半導体&5G」につぐ、米中戦争の第2ラウンドを考える。
 すでに述べたように、第2ラウンドは「金融&通貨」である。このことをトランプ大統領がどの程度理解しているかはわからない。おそらく、理解できていないと思うが、ここまで彼が中国に対してやってきたことは、なぜか、的を外していない。
 最近の報道によると、2018年3月に解任された元国務長官レックス・ティラーソン氏は、トランプに関して、公演の席で次のように述べたという。
 「規律正しく、プロセス重視のエクソンモービル社から来た私にとって、かなり無節操で、文章を読むのを好まず、概要報告書を読まず、多くのことについて細かな点を話したがらない人物の下で働くことは難しかった」
 さらに、「大統領閣下、やりたいことはわかるのですが、そのやり方ではできません。法律を破ります。条約に違反します」と伝えなければいけなかったと告白。トランプはこれに「ひどくいら立った」と言い、「毎日『これはできません、できることについて話し合いましょう』と言う私に飽き飽きしたのだと思う」と述べたのである。
 こんな大統領が、対中政策を間違わないのは奇跡としか言いようがないので、対中政策はドランゴンスレーヤー(対中強硬派)のブレーンが優秀と考えるべきだろう。
 なにしろ、トランプはこのティラーソン発言がテレビ放送されるやすぐに、こうツイートしているのだ。
 「(ティラーソンは)岩より固いバカ(dump as a rock)だったが、すぐに(政権から)追い出すことができなかった」「(ヤツは)ものすごい怠け者だった」
 これが、大統領の言うことだろうか? ファーウェイCFOが逮捕された翌日、中国政府が激怒している最中のことだ。
(つづく)


【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。