女性名使用で身分詐称は「不当」 トランスジェンダーがNYPD提訴

 【22日付ウォール・ストリート・ジャーナル】心と体の性が一致しないトランスジェンダーで、男性から女性に性別を変更した女性が、逮捕時に性別変更後の女性名を伝えたことで身分詐称罪で不当に起訴されたとして22日、ニューヨーク市警察(NYPD)の警官3人を相手取り提訴した。拘留時に警官らから嫌がらせも受けたと主張している。
 訴状によると、ブロンクス区で美容関係の職に就くリンダ・ドミンゲスさん(43)はスペイン語を母国語とし、英語は片言しか話せない。昨年4月、同区の公園内を歩いていたところ、不法侵入罪でNYPDに逮捕され、警官から名前を聞かれた際、出生時に持っていた男性名を答えた。しかし第44分署に連行された後、ニューヨーク州の身分証明書に記された性別変更後の女性名を通訳に伝えていた。ドミンゲスさんは翌日、不法侵入および身分詐称の罪で起訴された。
 拘留された際、1人だけピンク色の手錠をはめられた他、警官に執拗に性別を聞かれ、仕草を真似されるなどの嫌がらせを受けたという。
 NYPDは2012年、出生時に付けられた法的な名前と異なった名前を使用したトランスジェンダーの人に対し、身分詐称罪で起訴することを禁止するよう規定を改正している。ドミンゲスさんは4カ月後に両罪で起訴が取り下げられたものの、逮捕・拘留に当たった警官から屈辱を受けたと訴えている。
 市捜査局の2年前の調査によると、改正された規定についての訓練を受けたのは、77あるNYPDの分署のうちわずか6つだけだったという。