マンハッタン区ローワーイーストサイドに生まれ育ったルス・トーベさんは、非営利の社会福祉団体、ヘンリー・ストリート・セツルメントで洋裁を教えて半世紀。95歳と高齢だが、まだまだ現役だ。教室はトーベさんの自宅から歩いて10分の所にある低所得者用住宅の地下室で週2回開かれている。
ファスナーを付けたりスカートの丈を直したりする技術や忍耐力を持っている人は今やほとんどいないが、トーベさんは手入れの行き届いた白髪をかきあげながら、洋裁の楽しさと節約性を説く。「(このあたりは)最近、流行りの場所らしいけど、暮らしに余裕のない人もたくさん住んでいるのよ」とトーベさん。
ウォール・ストリート・ジャーナルの記者が取材に訪れた日、トーベさんが教えていたのはともに60代の女性。着古したスカートを今風によみがえらせたいと言うデボラ・スミスさんには、「レースを付けたらどう? セクシーになると思うわよ」とアドバイス。クッションにフリンジ(房飾り)を付けたいと教えを請うアン・ヘスさんには、手順をすらすらと説明。服飾品や小物のリサイクルのみならず、トーベさんは、ウェディングドレスの作り方まで指導するという。
授業料は無料。これまでに5000人がトーベさんから手ほどきを受けた。ヘンリー・ストリート・セツルメントの責任者、デイビッド・ガルザさんは同紙に、「トーベさんは地域にはなくてはならない人材」と目を細めた。