舌の役割と身体に及ぼす影響
暖かくなると、運動を再開する人も多いのではないでしょうか。今回はパフォーマンスを上げる要素である「舌」についてお話します。
舌には基本的に3つの役割があります。舌の表面で食べた物の味を感じる「味覚」、口の中にある食物を食道に送り込む「嚥下(えんか)」、声帯で発せられる振動を共鳴させる「発音」です。
新生児が母乳を飲む際に、舌で乳首を上顎に押し付けて母乳を絞り出すことから舌の活動は始まります。新生児が舌を運動させることで頭部と首周囲の筋肉が働き、首がすわります。
そして成長するにつれて舌には基本的な3つの役割以外に、頭部の軸を中心とした前方の重さと後方の脳の重さを釣り合わせるために下顎を安定させる機能を持ちます。つまり、頭部の重心バランスがとれ、正しい姿勢を保持することに舌はひと役かっているのです。そのため舌は体の中核の一部と考えられており、おおむね筋肉で構成されています。
舌は、上顎に置かれている状態が正常です。しかし上の歯や下顎に付着している場合は、舌に関連する組織が硬くなっていたり、上顎の空間が狭くなっていたり、歯を食いしばっていたりします。舌で前歯を押してしまうと、歯並びが悪くなるだけでなく、首の痛み、顎関節症、頭痛、睡眠時無呼吸症候群、吃音の原因となり、顔の表情などにも影響が出ます。
ファンクフィジオでは舌が上手く上顎に置けない人や頭部のバランスが取れない人、上記の症状がある人など口の中の問題が身体に影響を及ぼしていると判断した場合に、舌に直接触って治療していきます。舌の置き場所によって、片脚でのバランスの取れやすさにも大きく影響します。舌の状態が気になる人はぜひご相談ください。
押本理映 (FuncPhysio日本支部代表)
PT(日本の理学療法士)免許を2011年取得後、大学病院で臨床経験に励む。ダンスを中心とした芸術スポーツ分野のリハビリを学ぶために15年来米。NYUハークネス・ダンス・センター、高田洋平氏の下で徒手療法を学ぶ。専門分野はダンサーのスポーツ障害。10代でロシアにバレエ留学した経験を持つ。r.oshimoto@funcphysio.com