止まれ、止まれ、止まれーー。ブルックリン区フラットブッシュのニューカークプラザ駅に進入する地下鉄Q線の電車で7日朝、力いっぱい急ブレーキを掛けた運転士、ラリー・モレノさん(50)は祈った。前方の線路に見えたのはオレンジ色に黄色のラインが入ったニューヨーク都市交通局(MTA)のベストを着た男性。そばには女性の姿もあった。時速35マイル(約56キロ)で走っていた電車は、2人から数メートルのところで止まった。各メディアが報じた。
ベストを着ていたのは信号整備士のアンソニー・マンニノさん(54)。勤続22年のベテランだ。線路上に女性が立っているのを見つけ、直感的に線路に飛び込んだという。8日の会見で「女性を線路から逃がす時間はなかった。運転士に気付かせて止まってもらうしか方法はなかった」と振り返った。身の危険は全く恐れなかったという。
電車が止まった後、マンニノさんが女性を安全な場所まで連れて行くと、女性はどこかに行ってしまった。報道によると女性は自殺を試みたとみられ、ニューヨーク市警察(NYPD)は行方を追っている。この女性について、マンニノさんは会見で「2度目のチャンスだと思って、助けを求めてほしい」と語りかけた。